南海トラフ地震の津波被害による病院孤立を想定した大規模防災訓練を実施しました
三重大学医学部附属病院は、特定機能病院かつ災害拠点病院として、どんなときにも医療体制を継続できるよう災害時のBCPをはじめとする災害対策の導入および運用に力を入れ、職員参加による大小の防災訓練を定期的に実施しております。
その一環として、10月1日(土)、南海トラフ地震による津波被害で当院が孤立し、ライフラインや医療物資の調達が遮断された状況を想定した大規模防災訓練を実施しました。また、この訓練の一部は、内閣府が同日開催する「令和4年度大規模地震時医療活動訓練」として行われました。
この訓練では、孤立により診療活動を制限せざるを得ない中で、当院の入院患者さんのトリアージ(搬送が必要な患者さんの振り分け)を行い、外部の診療可能な病院に搬送したり、比較的軽症な方を水陸両用バギーで搬送したりする訓練を行いました。
また、内閣府訓練としては、生後2週で、人工呼吸器管理を必要とする乳児をクベース(運搬用保育器)に入れて防災へりにて四日市総合医療センターへ搬送する訓練も実施しました。
さらに、2022年3月に、藤田医科大学(愛知県)、浜松医科大学(静岡県)、三重大学で締結された大規模災害時の医療連携協定に基づき、それぞれのリソースや災害状況を共有し、連携方針を決定する訓練にも初めて取り組みました。
当院の訓練には、職員および医学部生、津北消防署の職員の方々など約300人が参加しました。
防災ヘリによる乳児の搬送訓練を行った青木美音助産師は、「今後起こりうる災害時の新生児搬送について、スタッフの連携や準備、赤ちゃんの安全な搬送における課題を共有しながら訓練できたことは大きな意義でした。また、実際にヘリに同乗しながら、赤ちゃんのために何が必要なのかを考えることができ、当院の利点と改善点をよりリアルに引き出せたのではないかと思います。今回の訓練を実際の行動に役立てることができるよう、今後に活かしたいと思います」と訓練の成果について話していました。
また、災害対策本部長として訓練を指揮した池田智明院長は、
「当院にとって、災害時にもいかに患者さんの不安に寄り添い、安全な医療を継続するかは重要な課題です。そのために、今回のテーマの一つであった地域内外の医療連携は欠かせません。参加した職員全員がこれらの視点を持ち、外部との連携のあり方を確認する訓練に真剣に取り組めたことは、まず有意義であったと感じます。また、今回初めて防災ヘリで繊細な管理が必要な周産期の赤ちゃんを搬出する訓練もありました。産婦人科医という私自身の専門領域からも、災害時での周産期のお母さんや赤ちゃんの保護について改めて検証する機会となりました」とコメントしています。
大規模地震時の医療活動に関する実動訓練と検証、および防災関係機関の相互協力の円滑化を目的に、国、地方公共団体などが連携して、毎年行われています。今年度は、南海トラフ地震により、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県が被災県となった想定で実施され、三重県からは、県災害拠点病院である当院をはじめ、行政や複数の医療機関が参加しました。