「漢方初学者が躓かない教育環境を整えたい」|鈴鹿医療科学大学東洋医学研究所 所長 西村甲先生インタビュー

西村 甲(鈴鹿医療科学大学東洋医学研究所 所長)

略歴
東京医科大学卒業。小児科専門医、小児神経専門医、漢方専門医、漢方指導医。平成22年から鈴鹿医療科学大学鍼灸学部教授。平成28年から鈴鹿医療科学大学東洋医学研究所 所長。著書に「漢方処方と方意」共著、南山堂、「絵でわかる東洋医学」単著、講談社などがある。趣味は旅行や食べ歩き。心に何のわだかまりもなく、安らかなことを指す「恬淡虚無(てんたんきょむ)」と、仕事では毎日少しでも前進することを心がけていることから「日々是決戦」を座右の銘とする。

聞き手
鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部鍼灸学科 2年 小田
三重大学 医学部医学科2年 山口
三重大学 医学部医学科2年 内山
三重大学 医学部医学科2年 宇都宮

鈴鹿医療科学大学東洋医学研究所 所長として研究を指揮するだけでなく、臨床医としても活躍される西村先生。今回は、特に東洋医学の研究に焦点を当てて話を伺いました。また番外編として見学させていただいた東洋医学研究所についてもレポートさせていただきました。

研究所の強みを生かして、漢方と鍼灸(しんきゅう)を組み合わせた研究を展開していきたい

学生 まず初めに、一週間のお仕事のスケジュールを教えていただけますか。

西村先生 はい。今学期は鍼灸学科の2年生、3年生の必修講義を担当しつつ、それ以外の時間は授業準備と研究に時間を当てています。また、三重県南勢地域の好意にしてくださっている先生のクリニックで臨床医としても勤務しています。

学生 西村先生は東洋医学研究所の所長をなさっているということですので、今回は研究を中心にお伺いします。現在どのような研究をされているか教えていただけますか。

西村先生 そうですね。漢方薬はこれまで効き目がよくわからないとか、臨床データが少ないという背景もあって、三た論法(やった、効いた、治った)などと言われる考えで使用されていると揶揄される面もあります。しかし、現在は漢方薬でも西洋薬と同様に多くの患者さんを対象とした臨床研究で二重盲検によって、プラセボと実薬を使って効果があるかといったエビデンスが求められます。

ですので、研究もそういった流れに沿って行う必要があるのですが、現在は患者さんを被験者とした臨床研究をメインには行っていないため、マウスなどを使った基礎研究の方でエビデンスを構築することを目指しています。

基礎研究に関してですが、私は東洋医学研究所に所属しているので漢方と鍼(はり)の両方を掛け合わせた研究を進めています。本来、漢方と鍼灸は東洋医学の両輪と呼ばれているのですが、戦後頃に分かれる傾向が出てきて、研究も別々に行われる事が多くなりました。それぞれの作用機序なども解明されつつあるのですが、これまで両者を併用すると相乗効果がどの位あるのかという研究は十分にされていない状況でした。鈴鹿医療科学大学には鍼灸学科がある為、漢方と鍼の併用による相乗効果を研究する事ができます。

学生 なるほど、確かに漢方と鍼灸を組み合わせた研究という話は聞いたことがなかったので、とても面白そうですね。具体的にはどのようなテーマを研究されているのでしょうか。

西村先生 具体的にはうつ病をテーマに研究しています。うつ病の人の脳には、ある部分に特有の脳血流変化があることが分かってきています。その血流の改善に、鍼が効くと期待がされています。その仕組みを解明するために、鍼による脳血流の変化を計測しています。

もちろん、うつ病には抗うつ薬があるのですが、鍼との作用機序の違いも解明されてきていて、併用する事によってより良い結果が出る可能性があります。患者さんを良くしたいというのが我々の目指すところなので、併用する事によって改善が早くなるのであれば、その方が良いわけです。そこに漢方が加われば更に違う効果を生むかもしれないという研究を現在行っています。

学生 薬膳を使った研究も行っているとお聞きしたのですが、薬膳に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか?

西村先生 はい。まず薬膳に興味を持ったきっかけですが、元々「薬食同源」という言葉が中国にあり、それが日本に来た時に「医食同源」という「日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を予防し、治療しよう」という意味の言葉に変わり、よりポピュラーなものになりました。

このように、本来、食と薬は切ってもきれない関係にあります。ですので、私も漢方医として食事療法を考える際に、自然と食事の中に生薬などが入ってくると面白いだろうなと考えるようになりました。そして、生薬だけではなく、食材が東洋医学的にどういう効果があるかといったことも考えるわけです。

そうする事で患者さんの体質も東洋医学的に診る事ができて、西洋医学の栄養学的な観点だけでなく、東洋医学的観点で食養生、食治療というものを見ていけると思っています。

これまでにも幾つか薬膳の学術研究が行われてきましたが、三た論法的な面が強く、漢方薬での効果をベースに、同様の効果を期待して食事に生薬を織り交ぜていくというものでした。しかし、個別に対応するだけでは、エビデンスはとれませんので、約3年前からしっかりと被験者を募って研究を行っています。

学生 薬膳の研究はどのようにスタートされたのでしょうか?

西村先生 はい、まずは試しに私たちが薬膳と定義している食事を被験者に摂取してもらい、VAS (visual analogue scale) を用いて自覚症状の変化をみたり、唾液と尿から得られる客観的なストレスマーカー(ステロイド、酸化ストレスマーカーなど)の値から薬膳の効果を明らかにすることを目指しました。

しかし、ハッキリとした効果が認められませんでした。原因は、薬膳でも漢方薬と同様に「同病異治」という考え方が適用されることにありました。「同病異治」とは、同じ病気でも患者さんの体質によって違う薬を処方する事を表す言葉なのですが、この考えに立つと、同じ症状を抱えている患者さんであっても体質ごとに、その人に合った薬膳というのは変わってくるわけです。

ですので、2年ほど前から、まず被験者の候補となる人に東洋医学的体質問診を受けてもらい、そのデータをもとに特定の体質の被験者にターゲットを絞り、その体質を改善するためのメニューを摂取してもらう方法に変更しました。その結果、体質の改善傾向が見えてきたので、今後は、同じ研究デザインで被験者数を増やしていきたいと考えています。

学生 食事療法の効果を見る臨床研究のデザイン上の工夫はありますか?

西村先生 クロスオーバー比較試験という手法を用います。この方法では、被験者を2つにグループ分けをして、薬膳と非薬膳を摂取してもらい、その影響を無くす期間(washout period)の後、薬膳と非薬膳をクロスさせ(入れ替えて)摂取してもらいます。3つの工程をそれぞれ1週間ずつ行い、全期間を3週間と決めています。長期間継続して行いたいと言うのが本音ですが、この研究は、東洋医学的体質問診で東洋医学的に偏りがあると診断された学生を被験者としているので彼らのモチベーションと試験や授業などの予定を考慮すると、現状3週間が限度と考えています。

学生 漢方や薬膳の効果に関するマクロ的な研究について伺ったのですが、少し視点を変えて漢方の分子レベルでのミクロな研究はどの位進んでるのかを教えてください。

西村先生 漢方の書籍で共著者でもある親しい薬学系の先生がいるのですが、その先生と話をする感じでは、とても苦労されている印象を受けます。

例えば、2種類の漢方が入った漢方薬があるのですが、その片方の成分を除去すると効果が全く無くなる、また、この漢方薬には12種類の生薬が入っていますが、その一つを除去しただけでも効果が全く無くなってしまったという例があります。他にも、成分は同じであっても、1つの成分の量を増やすだけで、その漢方薬の効果が風邪に効くはずが、下痢や腹痛に効果があるものに変わってしまうなどの例もあります。

劇的に薬が効くという事は生薬のバランスによるものなのか、煮出す行為によって別の物質が生成されるのかなど、現状では解明されてない部分がまだまだ多いですね。

 

地域医療に尽力した父の姿をみて、医師を志した

学生 ここからは、西村先生の経歴について聞かせてください。なぜ医師を志されたのでしょうか?

西村先生 医師である父の姿を見て育ったことが大きいと思います。 父は元々、大阪の病院の産婦人科に勤務していたのですが、戦争の影響もあり実家のある三重の病院に移ってきました。当時、診療の枠が内科しか空いてないと言うことで内科医として勤務した後、南島町(現南伊勢町)で開業しました。総合診療医みたいなところがあり、当時の患者さんの話を聞いたりすると、産婦人科や内科だけでなく、新生児科の分野もみていたりと、今振り返ると当時の父はよく全分野勉強していたなと思います。

地理的に、簡単に他の病院に搬送ということができるような地域ではなかったため、その場で解決することが求められる非常に厳しい環境で働いていたと思います。そういう環境の中でも、地元の患者さんに感謝される父の姿を見て、医師はやりがいのある仕事であるということを自然と感じて、小学生高学年の頃には自分も医師を志していました。

学生 なぜ小児科医になられたのですか?
父親が元々産婦人科であり、子供に関する経験談を聞く機会が多かったことや、子供は心の中の思いをストレートに表現してくれることが要因だったかもしれません。

小児科に勤務してからは当直や肉体労働が多く、点滴でも大人は入るのに、子供の身体は小さくて入らないなど一苦労でした。また乳児になると血管が見えないので、皮下脂肪の中の血管を探したり、赤ん坊は動いてしまうので固定が大変だったりしました。その分やり甲斐は感じていましたし、折角選んだ小児科だったのですぐに辞めるのは情けないと思って頑張りました。

学生 西村先生は小児科医として勤務されている際に漢方に興味を抱くようになったそうですが、漢方の魅力を感じるようになられたきっかけを教えていただけますでしょうか?

西村先生 実は父も漢方を使った治療をしていて、僕自身何度か効果を実感していて、昔から漢方は面白いなと思っていました。ですが、学生になってからは勉強、医師になってからはさらに手技など覚える事が沢山あり、なかなか漢方や東洋医学に手を出す事ができませんでした。

医師になって10年程経ち、余裕が出てきてからは、薬のメーカーさんの漢方の話に興味が湧くようになりました。ただ、西洋医学ベースの思考法では、東洋医学をあまり理解できず、患者さんにも説得力のある説明ができないため、中々積極的に漢方を処方することはできませんでした。

ただ、興味はあったので漢方の講習会などに自主的に参加してみると、東洋医学的な所見で患者さんを診断・治療する過程が、西洋医学的な視点とは全く異なっており、とても新鮮に感じられました。

それからは、自主的に書籍などを読んで本格的に漢方の勉強を始めました。ただ、最初は書いてある事が分からなくて、流派によって書かれていることが違うことはまだわかるのですが、同じ流派の系統の先生の書かれた本でも書かれていることが正反対だったりと非常に混乱しましたね。もちろん今であれば、背景的な文脈も理解しているので、混乱することはないのですが、当時の自分はそういった知識もなかったのでとても苦労しました。

学生 学ぶ側としては、流派ごとに書かれていることが違うというだけでも混乱しそうですが、それらを統一しようという流れはなかったのですか?

西村先生 当然、統一すべきだと思いますよね。実は私も同じことを考えて、過去に少しまとめた経験があります。慶應義塾大学に在籍していた際に、学生と一緒に中国流と日本流の融合を試みて、慶應大学内の医学雑誌で発表しました。私の単行本の中でも、少しまとめてあります。鈴鹿医療科学大学に来てからも現在進行形でやっていますね。

学生 漢方は独学で学ばれた後、慶應義塾大学の漢方医学センターに移られた経緯を教えていただけますか?

西村先生 小児科時代にお世話になった慶應義塾大学病院の中に漢方医学センターがあったのですが、転勤の関係で大学病院の近くに病院に勤務することになりました。その際に、せっかく大学病院の近くに勤務するのだから、大学病院の小児科を手伝いながら漢方の勉強をさせてほしいということで、教授の了解をいただきました。

それからは1年半ほど、午前は漢方外来を見学させてもらって、午後は小児科の神経外来を担当するという生活をしましたね。その後、もう少し漢方を勉強したいと考え、漢方医学センターの教員として、5年間程勤務させていただきました。

結局、自分は業界の重鎮ともいえる指導者達のもとで7年程漢方を学ぶ機会があり、非常に運がよかったなと感じています。

 

今後の漢方は、EBMをベースにしたマスへの治療法の確立と、より患者さん一人ひとりに合わせた個別化治療の両方が必要とされる

学生 次に、これからの漢方医学についてお聞きします。西村先生は「漢方では西洋医学的な科学的根拠の蓄積が難しく、主観的な情報をデータマイニングする方法が今後重要である」と述べられていますね。今後漢方で科学的エビデンスを貯めていくには、やはりデータマイニングを利用した自動問診システムを用いた診療が必要でしょうか?

西村先生 これまでは西洋医学的に効果があるか示す必要がありました。それは必要な事なのですが、漢方の特徴自体から、プラセボが用意できなかったりするので、やはり主観的な情報をデータマイニングする事は重要だと考えています。

現在はいくつかの施設で自動問診システムの研究も進んでおり、「この様な経過なら、この漢方が効く」という予測式が立てれるようになってきています。これにより、漢方にあまり詳しくない一般医師が漢方を処方する時の手助けになると考えています。

学生 今後漢方の進む方向として、「エビデンスを構築して、漢方に詳しくない医師も漢方を容易に処方できるようにすること」と「より個々人の患者さんにフォーカスした個別的な漢方治療」のどちらが重要になってくるでしょうか?

両方大事だと思います。一般の医師でも処方できるようにある程度のガイドラインは必要になります。それを定着させる事も大事ですが、理論や使い方など細かいところまで理解しなければいけないと思っています。

ガイドラインを絶対ではなく、1つの指標だと考えていただき、患者さん一人一人に合わせて治療していって欲しいと思いますね。

学生 少し話はそれるのですが、小児科医であり、漢方医でもある西村先生は西洋医学と漢方の共存や治療の相違点など、どのようにお考えでしょうか?

西村先生 当然西洋医学で治る病気があり、そちらの方が早く回復するのに、昔は自分が漢方医だから漢方のみで治すという先生もいたのですが、患者さんからしたら早く治った方がいいので、患者さんに適した治療を統合医療的な考えで見ていく必要があります。

漢方界には大塚敬節という巨匠がいたのですが、その先生も漢方一筋のはずなのに、患者さんを治すのに抗生物質がいいならそちらを処方するというスタンスでした。

ですから、我々医療従事者はしっかりと西洋医学を学び、西洋医学ならこの治療法があり、この様な経過をたどるということを知っておかないといけません。西洋医学で上手くいく範疇を理解して、それから逸脱した人は漢方の範疇だと考えています。

その分、漢方を処方する際には頭の中ではいろいろな事を考える必要があります。どこにポイントを持ってきて治療し、どこから漢方を取り入れるのか、慶應義塾大学の漢方医学センター時代は来院される患者さんの病気も様々で、外来診察の後はヘトヘトに疲れ果ててしまうほどでした。

また西洋医学的ベースでいるとガイドライン通りに治療して、治らなければそれまでですが、東洋医学的治療は様々な工夫ができるので、治癒するまで治療法の終わりがないと思っています。その為、考える事が多くて大変ですが充実していました。

学生 これまで西洋医学ベースの方に東洋医学を知ってもらおうとする流れなどあったのでしょうか。また、どうすれば東洋医学の認知度を上げられるでしょうか。

西村先生 江戸時代の書籍などを読むと中国医学的要素が多かったのですか、昭和頃に西洋医学ベースの人にも理解出来るようにと言う流れがあり、簡略化されて、それが主流になってしまっています。

削ぎ落とした事によって、マニュアル的なものは出来ましたが、病態分析が非常に簡素になってしまいました。調べてみると、中国には病態を表す言葉が多く存在するのですが、体系化されておらず、逆に日本は頻度の高い症候のみを残して他を捨て去ってしまったのです。

その為、日本では五臓六腑と言ってもほとんど使われない用語があったり、中国でも病態として虚実のどちらかがない臓器があったりなど、体系が互いに中途半端なものになっていて、それを丁度良いところに戻す必要があると思っています。そして医師が上手く誘導していく必要があり、そこから他の医療従事者に興味を持ってもらうのが、東洋医学を知ってもらう出発点になると思います。

徐々に各方面に広がっていってもらえると良いですね。薬を処方するのは医師や薬剤師なので、そういう方から盛り上げていって欲しいです。

 

慢性疼痛のワークショップを通して、鍼灸師も医療従事者であるということを学生にも認識してもらえるようになれば

学生 今回の夏のワークショップ(以降WS)にはどうのように関与されてましたか。また、今回学生に伝えたかったことや、来年度の抱負などありますでしょうか。

夏のワークショップで学生を指導する西村先生と学生

西村先生 話は三重大学での事前ミーティングの際に三重大学の丸山先生から聞いていたので準備はしていました。私に与えられたのが東洋医学のイントロという事だったので、どうやって興味を持ってもらうかを考えていました。

更に東洋医学、鍼灸に興味を持ってもらい、鍼灸も医療従事者だという認識を高めて欲しいと考えていました。学生達には西洋医学で行き詰まった時に東洋医学的視点でも患者さんを見る事が出来るようになってもらいたいですね。

来年度のWSを受ける学生は東洋医学のベースを学んでいる状態なので、慢性疼痛に対して漢方薬がどのような効果があるのかと言う話に進めると思っています。病態分析の実際の症例を紹介する方がリアルで良いかなと思います。その分専門用語が増え、難易度が上がるのでいい落とし所を見つけて、学生に興味を持ってもらえるようにしたいですね。

また、学生サポーターには東洋医学的な診察や患者さんに寄り添う姿勢を学び実践する存在になってもらい、参加者の理解が深まるように、他の学生が先生に質問する前に対応してくれると有難いですね。

 

漢方初学者が、最初に躓かないような教育環境を整えたい

学生 西村先生の今後の目標など教えていただけますでしょうか?

インタビュー・研究所見学後に西村先生、川ノ口先生と学生サポーターで記念撮影

西村先生 そうですね。私自身がすぐに師匠につく事ができず、独学で路頭に迷っていたので、独学でも漢方の初歩を学ぶ事ができる環境作りをしないといけないと思っています。

それでも熱心な方は飛行機や新幹線で指導者の外来で研修したり、講習会に行ったりしていますが、そうでない方もいるので、その人達が出だしで躓かないようにする必要があると感じています。

種々の入門書を執筆してきましたが、重要な古典を基本とした解説書が皆さんにお薦めするもので、3冊セットなんですが、まだ1冊目なので、残り2冊を作り終えたらひと段落だと思っています。

また、二千年前に書かれた治療書というものがあるのですが、その解釈を昔の人が変えてしまったとの説もあり、それが現在のベースとなっているので、ベースとして正しいのか、解釈はあっているのかをはっきりとさせ、基礎理論系を明らかにして西洋医学ベースの方にも納得してもらい、受け入れられる体制を作りたいですね。

学生 西村先生、本日はお忙しいなか本当にありがとうございました!

 

【番外編】東洋医学研究所の川ノ口先生による施設案内

東洋医学の両輪をなす漢方薬と鍼灸を組み合わせた研究を行っている鈴鹿医療科学大学の東洋医学研究所。今回は、研究所准教授である川ノ口先生に施設案内をしていただきました。またマウスを使ったうつ病と鍼の研究についても詳細を伺いました。東洋医学の鍼や漢方の効くメカニズムを西洋医学的な分子生物学をベースに明らかにするという現場を見させていただいたので、とても貴重な機会でした。

◆細胞培養室

神経細胞などを培養している部屋。培養する際に、雑菌が入ってしまってはいけないので、無菌状態で培養するそうです。

川ノ口先生には、培養室の説明に交えて、神経原性疼痛とミクログリアの関係性などについてもお話していただきました。

◆実験室
様々な実験をするため、数か所の部屋に機器が分けられています。この部屋ではマウスを用いたうつ病と鍼に関する研究の詳細を伺いました。

うつ病になったマウスに、鍼治療をすると、西洋医学と同様の効果を得られることがわかっているそうです。現在は、その機序を調べているそうです。その1つの原因として、鍼治療によって脳内の神経因子が調節されているのではないかという仮説を検証されているとのこと。

西洋医学的な薬は、医学的に何かを強制的に発現させたり止めたりさせる場合が多いため副作用が多いそうですが、漢方や鍼では何かを強制するのではなくて、高すぎるものを真ん中に寄せ、低すぎるものを真ん中に寄せているといったバランスを整える作用をするため副作用が低いのではないかという機序が予測されているようです。

◆電子顕微鏡 各種試料に対する微細構造の形態観察に用いるそうです。これ以外にも、PCR法やパッチクランプ法の実験器具について解説していただきました。

川ノ口先生、ご多忙の中、丁寧に解説をしてくださり本当にありがとうございました!

 

インタビューした学生の編集後記

◆漢方や研究について、もっと知りたいと思いました。

今回は大学の講義でもお世話になっている西村先生にお話を伺うことが出来ました。鍼と漢方の併用により、どのくらいの相乗効果があるのか、また鈴鹿医療科学大学の学生を被験者としている薬膳の効果や経緯についてお聞きしました。僕自身、鍼灸学科に所属しており、以前から興味があったのですが、もっと詳しく知りたいと思いました。

西村先生が「日々是決戦」という座右の銘を持って、毎日を過ごしていると知り、目標を決めて行動する事の大切さを再確認することが出来ました。

また、川ノ口先生に東洋医学研究所の研究室を案内していただき、お話で聞いていた実験内容が更に詳しく知ることが出来ました。

小田

◆西村先生の話を聞き、漢方の奥深さを感じることができました。
今回は東洋医学研究の最前線で活躍される先生にお話を伺うことが出来、研究にも興味がある自分としてはとてもよかったです。特に、成分のバランスを崩しただけで効果が著しく損なわれるという話が興味深く、これらの研究がどんどん進んでいくことでいままで救うことのできなかった患者にも希望が見えてくると思いました。

先生は教育者としても精力的に活躍されている方で、学生の教育に携わる傍ら漢方を学びたいという人のために執筆活動をなさっているとのことでした。ぜひ先生の著書を読んでみたいと思っています。

山口

◆漢方と鍼を組み合わるという本来あるべき東洋医学研究をされている点に共感しました。
前回のインタビューでは漢方での臨床をメインにされている高村先生にお話しを伺ったのですが、今回の西村先生は東洋医学研究所の所長をされているので、研究についてお聞きできることを楽しみにしていました。本来、東洋医学は漢方と鍼灸を両輪としていたが、日本では歴史的にそれぞれが別々に研究されるようになった経緯があり、東洋医学研究所では再び漢方と鍼灸をリンクさせて研究されている点がとても共感できました。また漢方医学の解釈の統一化にも取り組まれているということで、今後より漢方が学びやすくなることは、一人の学生として本当にありがたいので、残りの2冊の本が出版されるのが楽しみです。

また、川ノ口先生に研究所2階の研究室を案内していただき、東洋医学の効果を分子生物学的な研究手法で明らかにする手法について解説していただき、とても新鮮な経験ができました。やはりなぜ効くのかということが科学的に明らかになった方が、より確信して治療ができると思いますので、自分自身ももっとこの分野について関心をもっていきたいです。

宇都宮

◆インタビュー中、穏やかな表情の奥にある先生の漢方に対するエネルギーを感じました。
今回のインタビューでは、漢方の研究をメインにされている西村先生にお話を伺いました。漢方の研究でどのようなことが行われているのか知らなかったので、先生へのインタビューを楽しみにしておりました。実際、西村先生は、うつ病や薬膳、漢方×鍼灸の研究をされており、それに加え、漢方の教育環境の整備にも力を入れておられました。インタビュー中、穏やかな表情の奥にある先生の漢方に対するエネルギーを感じました。将来漢方の必要性を感じた時には、そのエネルギーが詰まった先生のお薦め3冊セットを手に取り、勉強していきたいと思います。西村先生、お忙しい中本当にありがとうございました。

また、インタビュー後には川ノ口先生に研究室を案内していただき、普段どのように研究を行っているのか教えていただきました。このような研究によって、漢方の科学的根拠が明らかになっていけば、漢方もより世間に広がっていくと思います。これからは、漢方の研究にも興味をもちつつ、西洋医学を学んでいきたいです。

内山

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