中村 喜美子「痛みを持ちながら生活する人への支援」

皆さんは、これまでにけがや骨折など、“痛い”という体験を少なからずしたことがあると思います。そのとき、どんな気持ちがしたでしょうか。おそらく、勉強に集中できなくなったり、いつになったらこの痛みはなくなるのだろうと不安な気持ちになったりしたことと思います。このように、その原因が治れば痛みもなくなっていく急性の痛みでさえもそうなのですから、長く続く「慢性疼痛」であれば、気持ちや生活への影響はさらに大きなものだと想像がつくでしょう。

痛みは、身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな側面をもち、それぞれが複雑にからみあって、その人の痛みをつくり上げています。痛みがあるために、これまでできていた日常生活動作ができなくなったり、社会や家庭内での役割を果たせなくなったり、気持ちが落ち込んだりすることにもなります。そして、それらのことが身体的痛みをさらに増強させることにもつながります。このような特徴を持つ痛みの治療には、やはり多職種によるさまざまな側面へのアプローチ、多職種チーム医療が重要となります。

多職種チーム医療のなかで看護は、痛みを持つ人を“痛みを持ちながら生活する人”として捉え、その人のQOL(Quality of Life:生活の質)を向上させることをめざしていきます。特に、長く続く「慢性疼痛」では、見通しのたたない不安や「どうして?」といういらだちは大きく、まずはその人の辛さ全部を理解することが大前提となります。その人の辛さをわかったうえで、痛みを持ちながらどのように生活していけばよいか、その人自身がどのように工夫すればよいかなど、生活の再構築を一緒に考える存在、痛みのある人にとって看護はそんな存在でなければならないと思っています。

私は、これまで臨床で痛みをもつ多くの患者さんに関わってきました。私自身が臨床で得たことも含めて、痛みを持ちながら生活する人への支援について、学生の皆さんとともに学んでいきたいと思います。

 

なかむら きみこ

2004年▶三重大学大学院医学系研究科看護学専攻修士課程修了
2006年▶がん看護専門看護師 三重大学医学部附属病院で緩和ケアチームにて活動
2016年~▶現職