伊藤和寛「医療と痛みとチーム」

 医療に携わる職を生業として選択した皆さんの医療に関するイメージはどのようなものでしょうか。自身が医療サービスを受けた経験や、家族・知人が医療サービスを受けた経験を見聞し、そこから医療提供者となる将来の自分をイメージしている人が大部分かと思いますが、このイメージは明るいイメージでしょうか。
医療現場で働いてきた私の経験を振り返ると、良いサービスが提供できたという思いよりも、上手くいかなかった、無力さや悔しさを痛感した思いばかりが思い出され、良い記憶のみではありません。それでも諦めず、どうにかならないか、何か良い方法はないのかと考え続け、患者さん・ご家族が光りを見つけることが出来るように手伝うことが我々医療提供者のすべき事であると考えています。皆さんが、医療提供者となる自分の理想像を醸成し、何を求められ、何ができるかを考え、努力し続けられる医療者となり、そうであり続けられることを願っています。
さて、本プロジェクトのキーワードである「痛み」について考えてみます。人は自身の心身に何らかの不調が生じたために医療サービスを受けるわけですが、最も困る不調の一つがこの「痛み」です。また、「痛み」は最も治療が難しいことの一つでもあります。本プロジェクトテーマである「慢性疼痛」に関する学びは、医療サービス全般の困難なことに挑む場面で通じる点が多く、今後の「学び方、考え方」を鍛えられる良い機会になると思います。
本プロジェクトのもう一つのキーワードは「チーム」です。チームとは、「共通の目的、目標を持った複数の人で構成された集合体」です。医療サービスの目的にチームで挑むことによって、全ての目的が達成されるとは限りませんが、チームで挑んだからこそ達成される目標は多く存在します。だからこそ、良いチームを作ることが必要です。良い結果を出すチームは、メンバーがそれぞれ補完的でなければなりません。そのためには、まず、他の人は何ができるかを知ることが重要です。そして、自分は何ができて何をすべきかがはっきりと見えてくるのだと思います。
最良のチーム医療者の一員になるために、本プロジェクトによって、自らの磨かなければならない能力を理解し高める端緒となることを願っています。

いとう かずひろ
2003年▶吉備国際大学保健科学部理学療法学科卒業
▶医療法人恒仁会 近江温泉病院総合リハビリテーションセンター入職
2012年▶鈴鹿医療科学大学大学院医療科学研究科医療科学専攻修士課程修了 修士
2018年▶鈴鹿医療科学大学保健衛生学部理学療法学科 助教
2019年▶鈴鹿医療科学大学保健衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻 助教 現職