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たか子の部屋

このコラムは緩和ケアチーム医師のつぶやきの場所です。臨床現場で出会った素敵なエピソードを紹介したり、日々の緩和ケアの実践で気づいたこと、考えたことをつづります。

緩和ケア外来でのひとこま

緩和ケアは入院中だけでなく外来でも受けることができるのをご存知ですか?

抗がん剤治療は、近ごろ外来通院での治療が行われる機会も多くなっています。病気による症状や向き合う治療による体調の変化に対して、自宅で過ごしながら「支持療法」(治療による副作用を軽減するような補助的な治療)や「症状緩和療法」(がん疼痛の緩和)を受けながら対処していくことになります。「緩和ケア外来」は、そのような患者さんのニーズにこたえるためにあります。

 緩和ケア外来の大きな役割は、身体症状の緩和だけではありません。重い疾患になったことで、起きる様々な体験やそこから派生する気持ちのつらさへの応対を行うことです。じっくりと話をしてもらう時間を設けると、
・何が不安で何が怖いのか、何が自身を力づけるのか、安らぎになるのか、
・何が一番大切なことなのか、誰を支えとしているのか、
・何を期待し、何を望んでいるのか、
といった、現在やこれまで、そしてこれからの自分に想いを馳せて患者さんは自分の内面にある体験を言葉として紡いでいきます。病気になる前に自分を形作っていたものを失うことで痛みや苦しみを体験して、どうしてそうなるんだろうという自分への問いかけは、多くの患者さんの胸をよぎるのでしょう。ないほうがいい、避けたほうがいいと思うむきもあると思います。しかし、目の前で、語りかけてくれるかのように真摯に言葉を紡ぐ患者さんたちは、痛みや苦しみの中から、新しい視座での意味を見いだし、良い悪いではない体験に変え新しい自分の支えや糧としていかれます。

ある患者さんが、著名人の著書の「孤独は、最大の病である」という言葉を教えてくださいました。重い病は、生まれてからこのかた自分を形作ってきたもの、自分を支えてきたものとの関係を変化させたり失わせたりするという意味で、孤独を深くさせるものなのだろうと思います。ただ、その生き様や体験は、聴かせてもらっている私の中にさざ波のように広がり、貴重な時間を共に過ごさせてもらっているという実感と共に新たな関係が生じたことで、自分自身が支えられていることに気づきます。一方的に医療者がケアを提供するといったことでは全くないのです。

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