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診療のご案内

診療内容

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができてしまう炎症性腸疾患の一つです。潰瘍性大腸炎の患者さんはほとんどの場合、薬物治療などの内科的治療に効果が見られます。内科的治療で効果の乏しい場合と大腸がんが発生した場合は手術が必要になります。様々な内科治療にもかかわらず長期間の改善がなく、日常生活に支障を来している場合や、副作用などで内科治療が継続できない場合も手術が考慮されます。

潰瘍性大腸炎に対する内科的治療は年々進歩し、治療薬の選択肢が増えています。治療の進歩により手術を避けられる症例が増えていますが、一方で手術時期の判断が難しくなり、手術が必要になったときに合併症リスクが高くなっている症例が今でも見られます(図1)。
「本当に手術が必要か?」「手術前に試しておくべき治療は?」「術後の生活はどうか?」などの相談、質問にも応じます。当科へ手術の必要性について意見を求めて紹介され、実際に手術を行わなかった患者さんも多数いらっしゃいます。

図1 潰瘍性大腸炎における手術適応の変化

潰瘍性大腸炎に対する手術

標準的な手術では原則として大腸はすべて切除します(図2)。多くの患者さんで永久人工肛門となっていた時代もありましたが、現在では、手術技術や手術器械の進歩により、肛門を温存する手術(大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術)において安全でかつ良好な成績が得られるようになっています。当科では2010年より体の負担が少なく、整容性に優れた腹腔鏡手術(図3)を積極的に行っておりますが、開腹手術同様の良好な成績が得られています。

図2 腹腔鏡下大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術
図3 潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡手術後の創

当科ではこれまで、潰瘍性大腸炎に対し、延べ500例以上の大腸手術(約400例の回腸嚢肛門吻合術)の経験があり、全国的にも有数の専門施設となっています。回腸嚢肛門吻合術における腹腔鏡手術の割合も増加傾向にあります(図4)。自然肛門は約95%の割合で機能温存が可能となっており、他の施設と比較しても良好な手術成績となっております。

図4 潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡手術(IAA)の割合

当科では吻合部の安静を保つために一時的な回腸人工肛門を造設し、回腸嚢肛門吻合が確実に治癒したことを待って約3か月後に閉鎖術を行う手術(2期分割手術)を基本としています(図5)。1期的吻合希望の場合には、一時的な人工肛門なしに手術を終えることができます。しかし、手術が終わった直後から回腸嚢内に便(消化液)が流れ込むことから、縫合不全という合併症をきたした場合、肛門機能の低下が一生残り、永久人工肛門になることがあります。そのため慎重な適応の判断とリスクに関する説明を行い、合意に至った場合のみ選択されます。一方で、緊急手術や全身状態が不良の場合には、1期目手術で負担の少ない3期分割を勧めることもあります。

図5 潰瘍性大腸炎に対する分割手術計画

当科では直腸の完全粘膜切除を伴う肛門吻合(IAA)を基本としています。IAAを正しく行うには高い技術を必要とし、限られた施設のみが可能となっています。肛門括約筋機能が低下している場合には、直腸粘膜を温存した肛門管吻合(IACA)を実施することもあります(図6)。

図6 潰瘍性大腸炎術における吻合法

手術後の生活

厚生労働省研究班でのアンケートによると、標準手術術式である大腸全摘術を受けた90%以上の方で食事を含めた日常生活に大きな制限がないことが報告されています。大腸全摘、回腸嚢肛門吻合術後の排便回数はやや多く、一日排便回数が6〜7回程度になります。便が泥状となり、少量の便漏れがみられる場合もありますが、ほとんどの方では排便時の切迫した感覚がなくなります。術前に使用していた治療薬はほとんどの方にとって不要になります。下痢止めや整腸剤を内服する方もいますが、大多数の方は外出や旅行も制限なくできます。

難治性回腸嚢炎、骨盤膿瘍、難治性瘻孔などの術後合併症に対する治療潰瘍性大腸炎術後にみられる合併症は潰瘍性大腸炎に特有のものが多数あり、他の手術と異なる専門的な知識が必要となります。当科では、難治性回腸嚢炎(図7)、骨盤膿瘍、難治性瘻孔に対する治療も積極的に取り組んでいます。
骨盤膿瘍、難治性回腸嚢炎に対する手術(回腸嚢肛門再吻合、redo-IPAA)も積極的に行っています。回腸嚢肛門再吻合は、個々の症例に応じた治療戦略を必要とする専門性の高い手術です。これまで27例の手術症例があり、永久人工肛門を回避できた割合は62.5%となっています(図8)。
他施設で行われた手術後に発生した術後合併症に対してもセカンドオピニオンとして相談を受け付けています。

図7 回腸嚢炎
図8 当科における回腸嚢肛門再吻合(redo-IPAA)の手術成績

術後のフォローアップ、外来通院について

人工肛門閉鎖までは医師の診察と並行して、皮膚・排泄ケア看護認定看護師(WOCナース)による人工肛門管理のサポートを行います。術後のフォローアップのため当院での3か月~1年に1度の通院をお勧めしています。術後合併症、排便コントロールには専門的な知識が必要なためIBD外科を専門としている医師(大北)が継続してフォローいたします。当科では他府県から来られる患者さんも沢山いらっしゃいます。三重県より北の都道府県にお住いの患者さんでは、関連施設の桑名市総合医療センターIBD外来(担当:大北)での診察も行っています。その他、豊田市にある家田病院と協力し、連携をとって術後のフォローを行っています。