当教室について
ごあいさつ
三重大学大学院医学系研究科 消化管・小児外科学教室の問山裕二と申します。私ども教室のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます。
2020年8月1日より教授に着任し、素晴らしい教室の仲間と関連病院の皆様の多大なるサポートをいただき、ゆっくりではございますが着実に当教室が成長してきていることを実感しております。改めて感謝を申し上げます。
消化管疾患ならびに小児外科疾患におきまして、外科診療、教育、研究のそれぞれの分野でハイレベルを目指して、アカデミアの外科医として成長すべく以下の内容を目標に研鑽を積んで参りました(2020年8月1日~2023年7月31日の3年間)。
「食道癌治療の集約化と術前最先端医療の導入」
食道外科専門医認定施設として、県内の市中病院からご紹介いただき、年間30例程度の食道癌手術症例に対応しています。合併症率の低下と根治性の向上を目指しロボット支援下食道切除術を施行しました。2022年度末までに70症例を経験し、当科の標準手術となっています。また再発率の高い進行食道癌に対しては、高い根治性と予後改善を目指し、術前化学放射線療法、手術、ニボルマブによる術後補助化学療法をシークエンスに行うことを、教室の新たな標準治療としています。
「全消化管悪性腫瘍の低侵襲手術の提供」
食道癌をはじめ、胃癌、結腸癌、直腸癌でロボット支援下手術を積極的に導入し、標準術式として確立しております。現在、ロボット手術認定施設としてプロクター2名、術者4名の人材を配置しております。また教室全体の技術認定医取得サポートプログラムが機能しています。
「直腸癌に対する臓器温存治療の導入と集約化」
2018年より化学放射線療法と化学療法を組み合わせたTotal neoadjuvant therapy(TNT)を導入し、臨床的完全奏効が得られる機会が増え、手術を回避した直腸温存治療(Watch and Wait strategy)に取り組んでいます。この治療法を導入したことで、臓器温存を希望される患者さんは県内、県外よりご紹介いただいています。現在までに60例にTNTを行い、42%の症例において手術回避が可能となっており、本邦で最も良好な成績となっています。
「炎症性腸疾患の集約化と新規治療法の提供」
炎症性腸疾患の専門外科(小児から成人)チームを構成し、三重県下の施設の他、東海地方、さらには全国から多数の手術症例の紹介を受け日々診療に当たっています。消化器内科との合同カンファレンスを行い、適切な時期の手術適応の決定や、術後再発予防の導入を円滑に行うことが可能です。外科治療としては、腹腔鏡下、ロボット支援下での低侵襲手術を標準とし、クローン病の狭窄、痔瘻あるいは短腸症候群に対してはそれぞれ新規吻合法の施行、脂肪組織由来幹細胞を用いた治療、GLP-2アナログ製剤を投与が可能な教室です。
「三重県の小児外科医療の集約化」
三重県内の小児外科手術は教室、関連病院(三重病院、三重県立総合医療センター)のみで対応可能です。良性腫瘍、鼠径ヘルニア、陰嚢水腫、臍ヘルニア、停留睾丸、虫垂炎一般的な小児外科疾患から、新生児緊急外科疾患、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、小児悪性固形腫瘍、胆道拡張症や胆道閉鎖症などの肝胆道系疾患などの重症疾患まで幅広く治療しています。小児腹腔鏡下手術・胸腔鏡下手術も、積極的に行っています。
「Translational Researchの充実:ゲノム解析によるバイオマーカー探索研究とreal imagingの外科治療への応用」
日々の診療から生じる臨床的問題点に対して、それを克服するための基礎研究ならびにTranslational Researchを創出し、その成果を臨床に役立たせることができるように心がけています。特に注力している研究は、ゲノム、エピゲノムによる炎症性発癌のメカニズム解析から治療法の開発、早期診断マーカー、再発診断マーカー、治療効果判定マーカーの開発を進めています。また2光子レーザーの術中病理診断を目的とした研究を進めており、複数の特許取得と大型予算の獲得を達成しております。
このようにおおむね目標を達成できたことは、教室の皆様、関連病院の皆様の目標を見据えた努力の結晶です。今後の3年(2023年8月1日~)も以下の目標に向かい、着実に進化していきたいと思います。
- 低侵襲手術(ロボット手術)術者の裾野拡大
- スタッフの適正配置による消化器外科医、小児外科医の育成(大学教室、関連病院)
- Academic surgeonの輩出
- Translational Researchの新規領域の開拓
最後に、
三重県は急速な人口減少と高齢化が進むと推計されています。適正な地域に、適正な数の優秀な外科医の輩出は重要な使命であると考えております。一人でも多くの消化器外科医の輩出に努め、県内関連病院と連携して、人材の派遣、有効なネットワーク形成に努力いたします。また教室の皆さんが、患者さん、同僚、すべての医療に携わるスタッフを思いやる「利他の心」を持った優しい、人間味あふれる医療人であってほしいと思っています。多様性、ワークライフバランスを大切にし、自分の考えを自由に発言でき、活気に満ちた、そして風通しの良い教室が理想である考えています。
今後ともご指導、ご鞭撻を何卒よろしくお願い申し上げます。
(2023年8月1日:問山裕二)
Profile
問山 裕二 〈といやま ゆうじ〉
三重大学大学院 消化管・小児外科学 教授
学歴
平成9年3月25日 | 三重大学医学部 卒業 |
平成13年4月1日 | 三重大学大学院 医学研究科 博士課程入学 |
平成17年3月31日 | 同 修了 |
職歴
平成9年7月1日 | 三重大学医学部附属病院第二外科医員(研修医) |
平成10年7月1日 | 岡波総合病院 外科医師 |
平成12年10月1日 | 三重大学医学部附属病院 医員 |
平成13年7月1日 | 伊賀市立上野総合市民病院 外科医師 |
平成13年10月1日 | 三重大学医学部附属病院 医員 |
平成19年4月1日 | 三重大学医学部附属病院 助教 |
平成23年 4月1日 | Baylor Medical Center at DALLAS (Post Doctor Fellow) |
平成25年4月1日 | 三重大学大学院医学系研究科生命医科学専攻臨床医学系講座 助教 |
平成28年4月1日 | 三重大学医学部附属病院消化管外科 講師 |
平成30年4月1日 | 三重大学医学部附属病院消化管外科 准教授 |
令和2年4月1日 | 三重大学大学院医学系研究科消化管・小児外科学 教授 |
令和4年4月1日 | 三重大学大学院医学系研究科先端的 外科技術開発学 教授 兼任 |
令和6年4月1日 | 三重大学医学部附属病院 副病院長 |
所属学会・資格
日本外科学会 | 外科専門医・指導医 |
日本消化器外科学会 | 消化器外科専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医 |
日本大腸肛門病学会 | 大腸肛門病専門医・指導医 |
日本消化器病学会 | 消化器病専門医・指導医 |
日本消化管学会 | 胃腸科専門医・指導医 |
日本遺伝性腫瘍学会 | 遺伝性腫瘍指導医 |
日本腹部救急医学会 | 腹部救急認定医 |
日本がん治療認定医機構 | がん治療認定医・暫定教育医 |
ICD(インフェクションコントロールドクター) | |
American College of Surgeons Fellow (FACS) |
所属学会・役員
日本外科学会 | 代議員 |
日本消化管学会 | 代議員 北陸・東海・甲信越支部 幹事 |
日本消化器外科学会 | 評議員 |
日本大腸肛門病学会 | 理事、評議員 |
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会 | 評議員 |
日本外科感染症学会 | 評議員 |
日本消化器病学会 | 東海支部幹事 |
日本癌治療学会 | 代議員 |
日本臨床外科学会 | 評議員 |
日本遺伝性腫瘍学会 | 評議員 |
東海外科学会 | 評議員 |
所属学会・役職
日本外科学会 |
Case Report誌編集委員会、指定・関連施設 事務連絡指導責任者、プログラム委員会
|
日本大腸肛門病学会 |
倫理審査委員会、総務委員会、将来構想検討委員会、邦文誌編集委員会、便失禁診療ガイドライン作成委員会(評価委員会) |
日本消化器外科学会 |
テキスト制作実務小委員会班長、プログラム委員会、広報委員会、英文誌運営委員会、試験問題作成委員会、Next Generation Recruit委員会委員、Webサイトリニューアルワーキンググループ委員 |
日本消化管学会 | カリキュラム検討部会 |
日本外科感染症学会 | 総務委員会、周術期感染症標準計測方法検討委員会 ガイドライン委員会 |
日本遺伝性腫瘍学会 | 評議員選出委員会 |
大腸癌研究会 | 広報委員会、家族性大腸癌委員会、世話人 |
東海大腸外科治療研究会 | 世話人 |
東海ストーマ・排泄リハビリテーション研究会 | 世話人 |
名古屋クローン病研究会 | 世話人 |
三重外科集談会 |
世話人 |