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診療のご案内

診療内容

胃がん

胃がんの治療には,大きくわけて外科的治療(内視鏡治療または外科的手術)と内科的治療(抗癌剤治療)があり、がんの進行度により胃がん治療ガイドラインに準じて治療方針の決定を行っています(患者さんのための胃がん治療ガイドライン2023年版)。

手術での根治が期待できる患者様には可能な限り早期に手術(別項参照)を施行しています。また、当院では2000年から腹腔鏡下手術(腫瘍の切除までをすべて腹壁の5か所の1cm程の小さい創のみで施行、再建などは3.5~4cm程の傷から行う)を導入し、現在まで約700名ほどの患者様にこの手術を受けていただいております。
腹腔鏡手術の技術は年々進歩し、出血量は少なく、術後在院日数が短縮(16→10日)されており、従来からの開腹手術と比べても癌の根治性を損なわずに患者様の身体への負担を最小限に抑え、安全な手術を提供しております。
手術のみでの根治が難しいとされる進行胃がんの患者様には、手術治療と抗がん剤治療を併用して施行します。診断時に遠隔転移(胃からはなれた臓器やリンパ節にがんの転移を認めること)がある場合は、手術で治すことが困難になります。その場合は、抗がん剤を主体として、場合により手術や放射線治療などを組み合わせた治療を行います。

現在、本邦では手術で治すことができない段階の胃がん(切除不能胃がん)の抗がん剤治療の成績は中央生存期間13カ月と満足のいくものではありません。我々は2000年以降,抗がん剤加療後にタイミングを見計らって外科的手術を組み合わせる治療(腫瘍細胞縮小手術)を用いており、生存期間中央値は22.6か月と良好な成績を残しております。食道癌治療と同様に、胃切除術後の患者様の手術の不安や食生活の不安をできるだけ最小限にして退院して頂くため、理学療法士・癌専門看護師・栄養士・癌専門薬剤師を含めた専門チームで協力して患者様の診療にあたっています。

(図5)胃癌手術後のステージ別5年生存率(ステージ4は当科で治療した患者様での治療成績)

早期胃がんに対するセンチネルリンパ節を指標としたリンパ節転移診断と個別化手術の有用性に関する臨床試験(多施設共同試験)

鏡視下手術や集学的治療が進歩してしていますが、現在のガイドラインでは胃がんの手術の基本は胃を大部分切除することになります。胃切除後には逆流、胸やけ、腹部膨満感、腹鳴、下痢、ダンピング症状(眠気、冷感、動悸、めまいなど)、貧血、骨障害などのさまざまな障害がでます。これに着目して、早期胃がんに対してはがん治療の根治性を担保しつつセンチネルリンパ節(癌が最初に転移するリンパ節)にがんの転移があるかどうかを確認して手術の低侵襲化と機能温存を目的とした胃機能温存手術(胃をできるだけ残す手術)を行う、多施設共同臨床試験に参加しています。すなわち、今までできなかったリンパ節転移の有無を術中に見つけ出して手術(ナビゲーション手術)を行うことによって早期胃がんに対して今後は胃の切除範囲をより小さくして患者さんの術後の生活の質を落とさないようにする試みです。

(図6)センチネルリンパ節検索

リンパ節に転移が判明した場合は定型手術(胃を2/3または全切除)、転移がないと判明した場合は縮小手術(胃の上1/3を取る手術や胃を部分的に取る手術)を選択することができます。早期胃がんの患者様のリンパ節転移率は約10%であるため、リンパ節転移のない残りの90%の患者様にはできるだけ機能を温存して生活の質(QOL)をよくできる可能性があります。
また胃を小さく切る手術は腹腔鏡手術と内視鏡手術と両方のアプローチで創の小さい手術を行う腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)が適応できます。当院はこの臨床試験に参加しており患者様のご希望に応じて先進医療Bでこの手術行ってきましたが、現在この臨床試験の症例登録は終了し、この手術の有用性を検証しているところです。