診療のご案内
診療内容
小児外科疾患
小児外科は、新生児から乳児、学童、思春期までの外科的治療全般(脳神経外科、心臓外科、整形外科的疾患を除く)を専門に担当しています。
具体的には、体表の良性腫瘍、鼠径ヘルニア(脱腸)、陰嚢水腫、臍(へそ)ヘルニア(いわゆる出べそ)、停留睾丸、虫垂炎、便秘症などの一般的な小児外科疾患から、新生児緊急外科疾患(24時間受け入れ可能)、 小児の潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、小児悪性固形腫瘍、胆道拡張症や胆道閉鎖症などの肝胆道系疾患などの重症疾患まで幅広く治療しています。また、高度な技術を要する小児腹腔鏡下手術・胸腔鏡下手術も、積極的に行っております。
当科では、日本小児外科学会認定の小児外科専門のスタッフ(小児外科専門医2名、小児外科指導医1名)が診療を行っています。
過去3年の手術件数
2020 | 2021 | 2022 | |
---|---|---|---|
食道手術 | 0 | 2 | 2 |
肺切除 | 1 | 0 | 1 |
噴門機能再建 | 2 | 4 | 10 |
胃軸捻転症手術 | 0 | 0 | 0 |
肥厚性幽門筋切開 | 3 | 1 | 4 |
腸閉鎖手術 | 4 | 8 | 5 |
腸回転異常症手術 | 2 | 3 | 1 |
鎖肛根治術 | 4 | 3 | 3 |
ヒルシュスプルング病根治 | 5 | 2 | 1 |
大腸全摘(潰瘍性大腸炎) | 2 | 0 | 4 |
虫垂切除 | 4 | 6 | 7 |
人工肛門造設 | 5 | 14 | 8 |
胃・腸切除・吻合 | 21 | 20 | 3 |
消化管穿孔手術 | 2 | 3 | 4 |
イレウス手術 | 5 | 15 | 1 |
直腸脱・痔瘻・痔核・脱肛根治術 | 2 | 6 | 3 |
胆道拡張症手術・胆管空腸吻合 | 0 | 1 | 1 |
胆道閉鎖根治 | 2 | 0 | 5 |
肝臓移植・肝切除(ドナー除く) | 1 | 0 | 0 |
腎盂尿管形成 | 1 | 0 | 0 |
臍帯ヘルニア・腹壁破裂手術 | 0 | 0 | 2 |
横隔膜ヘルニア修復 | 1 | 1 | 6 |
悪性腫瘍手術(生検含む) | 5 | 6 | 6 |
卵巣奇形腫摘出 | 5 | 2 | 5 |
縦隔・腹部・骨盤良性腫瘍摘出術 | 1 | 1 | 1 |
その他開腹・腹腔鏡手術 | 2 | 2 | 6 |
リンパ節/腫瘤生検 | 4 | 0 | 1 |
リンパ管腫局注 | 1 | 2 | 3 |
経皮的腎/肝生検 | 1 | 2 | 0 |
その他摘出術・形成術 | 3 | 2 | 7 |
頚瘻・嚢胞手術 | 1 | 0 | 1 |
気管切開形成・閉鎖 | 5 | 6 | 5 |
停留睾丸・精巣捻転手術 | 14 | 15 | 21 |
臍・腹壁ヘルニア手術 | 3 | 10 | 8 |
鼠径ヘルニア類縁疾患手術 | 19 | 26 | 16 |
カフ付きカテーテル・ポート挿入・抜去 | 13 | 23 | 31 |
中心静脈穿刺術 | 2 | 1 | 0 |
胸・腹腔穿刺・開腹ドレナージ術 | 0 | 0 | 2 |
PTCD | 10 | 2 | 2 |
内視鏡検査 | 38 | 39 | 45 |
内視鏡下処置 | 3 | 1 | 6 |
その他 | 11 | 13 | 6 |
合計 | 208 | 215 | 243 |
小児外科疾患に対する低侵襲手術(内視鏡手術:胸腔鏡・腹腔鏡)、小切開手術
手術の質を担保しつつ手術後の創跡は目立たないようにするには、手術切開の場所と大きさに工夫が必要です。手術切開の場所を工夫して利点や問題点を検討しながら最も良い手術方法を選択しています。
切開が小さい手術として、腹腔鏡や胸腔鏡などの内視鏡で体の中を観察しながら専用の器具(鉗子)を用いて手術操作を行う内視鏡手術や臍を利用した小切開での開腹手術を積極的に導入しています。
小児外科領域でも内視鏡手術の適応疾患が徐々に広がっており、メリットが大きい疾患においては積極的に導入しています。内視鏡手術は専用の器具を体内に挿入して手術操作を行うために数カ所の創ができますが、創自体が3〜10mm程度と非常に小さく、創が目立ちません。また痛みが少ないために手術後に痰が出しやすくなり、肺炎などの合併症が減少し、術後早期から離床できるために術後の回復も早いことから入院期間の短縮につながるなどのメリットがあります。
最近では、SILPECといって、臍の創部だけで鼡径ヘルニア手術ができる整容性に優れた術式も選択可能となっています。
当科では、内視鏡手術を積極的に取り入れ、手術難易度が高いといわれる手術においても、安全で安心な手術が大事なお子様に提供できるよう努めています。
現在、以下のような疾患を中心に内視鏡手術や臍部小開腹手術を行っております。
胸腔鏡下手術 | 先天性食道狭窄症、先天性横隔膜ヘルニア、横隔膜弛緩症、嚢胞性肺疾患、肺分画症など |
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腹腔鏡下手術 | 胃食道逆流症、胃軸捻転症、急性虫垂炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、ヒルシュスプルング病、先天性胆道拡張症、脾臓摘出を要する疾患(遺伝性球状赤血球症、特発性血小板減少症など)、遊走脾、水腎症(腎盂尿管移行部狭窄)、卵巣嚢腫・腫瘍、鼠径ヘルニア、停留精巣(お腹の中に精巣がある場合)など |
臍部小切開手術 | 肥厚性幽門狭窄症、先天性腸閉鎖・狭窄症、腸回転異常症、メッケル憩室、卵巣嚢腫・腫瘍 上記以外の疾患においても症例によって適応となる場合があります。 |
小児固形腫瘍への外科治療
当院は厚生労働省に指定されている小児がん拠点病院の一つであり、頸部、胸部、胸腔内、腹腔内の、良性・悪性の固形腫瘍に対する治療を、小児科を中心として放射線科、肝胆膵・移植外科、整形外科、脳神経外科などと協同して行っています。
医療連携について
小児外科疾患は、成人外科疾患とは、疾患の種類が大きく異なり、からだも心も発展途上にあるため、年齢や個々の発達に応じた治療とフォローアップが必要です。近年、新生児外科の手術成績において、一般病院と小児外科学会認定施設病院、さらに、周産期センター(子供を産むお母さんと赤ちゃんのための治療や管理を診療科の枠を超えて連携し、行うことができる施設)を有する病院では、成績の差がみられることもわかってきました。三重大学附属病院は、母性病棟、新生児集中治療室(NICU:赤ちゃんの集中治療室)からなる周産母子センターを有し、小児外科、小児科、産科の医師だけでなく、看護師(母性看護専門、助産師)による周産期チームで定期的にカンファレンスを行い、母体の周産期管理や患児の治療方針などを検討して治療成績の向上を目指しています。
さらに、県内の関連施設である国立病院機構三重病院や三重県立総合医療センターでも小児外科の常勤スタッフが外来・入院診療を行っており、また桑名市総合医療センターでは月に1回、小児外科外来診療を行っております。各施設が密に連携し、退院後のお子様のケアも含めて、地域に根差した医療をご提供させて頂いております。
また、母体や新生児の救急搬送ネットワークも充実しており、出生前あるいは出生後に病気が診断された赤ちゃんの外科治療を、タイミングを逃すことなく行うことができます。県内の産婦人科診療所、地域周産期母子医療センター、総合周産期母子医療センターがネットワークでつながり、周産期から退院まで、専門的、先端的で、安心な治療を受けていただいています。
小児在宅医療への取り組み
我々の治療を受けていただいた患者さんには、退院後のフォローにも責任があるのは当然です。退院後の本院外来通院や他病院でのフォローは当然ですが、在宅医療を必要とされる患者さんに対しては、本院「小児トータルケアセンター」と協同しながら、地域と連携し患者さんとご家族のサポートを行っています。
病棟内プレイルームやイベントの充実
年齢に応じた本・絵本・コミック、おもちゃ、ボードゲーム、テレビゲーム、DVD、文房具などをそろえています。小児病棟入院中の患者さんはここで好きなときに自由に遊べます。
週に数回、CLSによる企画(夜の映画会、クッキング、工作など)や、ボランティア学生によるプレイタイム(工作、ボーリング大会、クッキング、付き添い者のためのマッサージなど)を行っています。
患者さんおよびその家族のための宿泊施設
三重大学医学部附属病院等の津市近郊の病院に入院あるいは通院中の患者さんおよびその家族のための宿泊施設として三重ファミリールーム・ハーモニーハウスがあります。ご家族の面会時に宿泊が必要な場合、外来通院の時に宿泊が必要な場合、外泊することが難しい患者さんが家族と滞在するときなどに御利用していただくことができます。