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診療のご案内

診療内容

食道がん

食道がんの治療には、主に手術治療・放射線治療・抗がん剤治療があり、場合によってそれぞれを組み合わせた治療が必要となります。食道がんに関する診断・治療については,がん診療ガイドラインの記載されています。当院では、消化管外科・消化器内科・腫瘍内科・放射線科・耳鼻咽喉頭頸部外科など他科合同のカンファレンスを定期的に行い、三重大学附属病院(診療科を問わず)を受診された患者さんがより早く適切な治療がうけれるようなシステムを構築しております。また、県内の多くの基幹病院とも連携しており、その後の治療でも複数の診療科間や病院間でもで緊密に連携をとることにより一人一人に最適な治療法を提供できるよう努力しております。

食道は気管・気管支,大血管,肺や心臓など重要な臓器に囲まれていることもあり、食道がん手術は専門性と難易度が高い手術となります。手術は食道外科専門医,食道科認定医,内視鏡外科技術認定医を中心に取り組んでおり,2008年からは内視鏡機器を用いた手術(鏡視下手術)、2018年からはさらに手術支援機器を用いた手術(ロボット支援下手術)を導入しました。これら手術は、従来の胸を大きくあける手術と比較して創が小さく(図2)(肋骨を切離する必要がありません)、術後の痛みが軽減できることや、術中の出血量を減少させることができます。開胸手術では平均出血量は700mlでしたが、鏡視下手術に移行後は,平均100ml程度に減少しました。

(図2)鏡視下手術は1㎝程度の傷を5~6カ所あけて行います。

食道がんの手術は頸部、胸部、腹部を切開する大きな手術となりますので、様々な術中術後の合併症が生じる可能性があります。主な合併症には、手術部位の出血や縫合不全(つなぎ目の漏れ)、肺炎、反回神経(声帯を動かす神経)麻痺や術後せん妄などがあります。食道がん手術を多く行っている施設においても、合併症率約41.9%(全国臨床統計データベースより)と発生が多いのが現状です。
当院では合併症発症を少しでも減らすために手術以外にも様々な取り組みを行っており、縫合不全率の低下(13%→1.7%)や術後せん妄(53%→13%)、肺炎(23%→8%)の発症率低下などの効果を認めております。
さらに食道がんの手術の特徴として、手術後早期の嚥下機能低下(飲み込みがうまくできないこと)が多くあります。当院では耳鼻科咽喉頭頸部外科医・口腔外科医・理学療法士・がん専門看護師・栄養士を含めた専門チームで手術前から退院まで肺炎予防や術後の嚥下訓練(飲み込みの訓練)、栄養改善、食事指導など患者様の診療にあたっています。
県内では唯一の食道外科専門医認定施設の認定を受けており、2022年は食道切除を約50名(内視鏡切除も含む)、化学放射線療法や化学療法は約20名の患者様に治療を行い、さらなる治療成績向上を目指して取り組んでおります。

(図3)食道癌手術後のステージ別5年生存率