小児のがん

胚細胞腫瘍

胚細胞腫瘍は、胎生期の原始生殖細胞といわれる、精子や卵子になる前の未成熟な細胞から発生した腫瘍の総称です。精巣・卵巣といった性腺由来のものと、仙尾部、後腹膜、前縦隔、頸部、頭蓋内など性腺外に出るものに分けられます。頭蓋内では松果体の付近に多く発生します。
胚細胞腫瘍の中でもっとも頻度が高いのは奇形腫と呼ばれる腫瘍であり、構成する細胞の分化の程度により成熟型と未熟型に分けられます。胚細胞腫瘍は、体のどのような部位にも分化できる可能性を持つ生殖細胞由来であるため、1つの腫瘍の中に神経系成分、脂肪成分、骨や歯の成分、のう胞成分などいろいろな組織成分が集まっているのが特徴です。その他、胎児性がん(精巣)、多胎芽腫、卵黄のう腫瘍、絨毛がんや、未分化胚細胞腫(卵巣)、胚細胞腫(性腺外)、セミノーマ(精上皮腫:精巣)などの悪性の胚細胞腫瘍もあります。また良性型の奇形腫が、時間の経過により悪性化したり、悪性の形で再発したりすることもあります。よく発症する年齢や頻度は生じる部位により異なります。

治療

腫瘍が発生した部位に応じて、さまざまな診療科と連携します。例えば、頭蓋内の胚細胞腫瘍であれば脳神経外科、卵巣・精巣であれば小児外科、泌尿器科、婦人科など多くの診療科と関わることになります。胚細胞腫瘍の治療は、手術・化学療法・放射線治療からなる集学的治療が必要です。三重大学医学部附属病院の小児科では、脳神経外科、小児外科、泌尿器科、婦人科や放射線治療科と緊密に連携し、患者さんに最適な治療を提供できるように努めています。また、日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group; JCCG)の胚細胞腫瘍委員会との連携のもと、小児がんを治療している全国の施設と協力して、世界標準の胚細胞腫瘍治療を提供しています。