皮膚

悪性黒色腫

メラニン色素を産生する色素細胞が癌化したものです。外的刺激、紫外線が誘因となる場合があります。発生頻度には人種差があり白人に多く発症し日本人では10万人あたり1〜2人程度と言われています。また白人では紫外線曝露部などに多くできますが、日本人では手足、指、爪に多く発症します。

症状

多くは黒色の色素斑、腫瘤を呈します。時にホクロとの区別が難しい場合があります。一般的にホクロとの見極めのポイントとして左右の対称性、境界の性状、色調濃淡、表面のもりあがり、水平方向の大きさなどをチェックします。またダーモスコピーと言う検査器具も活用します。

ダーモスコピー
ハロゲンランプや白色発光ダイオードにより病変を明るくし、拡大して観察する特殊な虫眼鏡の様な器具です。通常、皮膚表面では光の乱反射が起こっており、皮膚の色調観察を阻害しています。このダーモスコピーを用いることで乱反射を防ぎ、より診断精度を高めた観察が可能となります。

治療

治療は進行具合により異なります。悪性黒色の大きさは腫瘍の厚さで判断します。厚さが概ね0〜0.85mmの場合はリンパ節含めた転移の危険性は低く、腫瘍辺縁から0.5〜1cm程度離して切除します。0.85mmを超える厚さの場合は所属リンパ節転移を引き起こす危険性が生じるとされ、センチネルリンパ節生検も行います。腫瘍から確保するゆとりは、厚さに応じて検討され4mmを超える厚さの場合は少なくとも2cmは確保します。センチネルリンパ節に転移がある場合、画像検査でリンパ節転移が指摘される場合は所属リンパ節郭清も行います。リンパ節転移を伴っている場合、手術後にお薬を用いた再発予防治療を提案します。既に遠隔転移(臓器転移)が起こってしまっている場合、根治は難しく手術、放射線、薬物治療を組み合わせた集学的治療で対応します。

悪性黒色腫に用いられるお薬

免疫チェックポイント阻害薬

我々には免疫というシステムがあり、通常は細菌、ウィルス、癌細胞を体内から排除するように働いています。免疫が正常に働くには免疫を活性化する“アクセル”と抑制する“ブレーキ”がバランスを取る必要があります。癌細胞はブレーキを利用することで、免疫の働きを逃れ、癌細胞の増殖が起こります。免疫チェックポイント阻害薬は免疫を抑制するブレーキを解放し免疫を活性化することで癌細胞の排除をねらうお薬です。

低分子標的薬

悪性黒色腫は時にBRAFと呼ばれる遺伝子に異常が生じていることがあります。この異常により癌細胞増殖信号が強化されることで癌細胞の異常増殖が生じます。この遺伝子の働きをピンポイントで抑えるお薬が分子標的薬です。このお薬はBRAF遺伝子に異常がある場合にしか効き目が発揮されませんので、投与に先立ち、腫瘍細胞を用いた遺伝子変異検査を行う必要があります。