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低侵襲治療の紹介

小線源療法 / ブラキセラピー

この治療は前立腺がんに対する放射線治療としてアメリカでは現在の手法で既に15年以上も行われております。日本では医療法、放射線障害防止法などの法律的な問題により今まで施行できませんでしたが、平成15年7月認可に至りました。比較的浸襲が少なく、安全で有効な治療法であることはアメリカで最初立証され、本邦でも広く行われています。

小線源療法とは

小線源療法とは、小さな放射線源を治療する部分に挿入して行う放射線治療です。英語ではブラキテラピー(brachytherapy)と言われています。ブラキ(brachy)とは短いという意味で、放射線源と照射目標との距離が短いことからこのように呼ばれています。日本においても古くから、口腔内のがんや婦人科領域のがんに対し、ラジウム、セシウム、金などの放射線物質を用いた小線源療法が行われてきました。

治療の実際、利点、欠点

現在、I-125(ヨウ素-125)シード線源を用いた治療が行われています。

治療の利点

放射線障害がおこりにくい、性機能が維持されやすい、失禁が生じにくい、入院期間が短い、ことが挙げられます。

治療の欠点

放射線障害(放射線性直腸炎)、排尿障害が生じることがあります。また10年以上経過した後の膀胱がんや直腸がんの発症が一般人口に比べ高くなると言われています(2次性発がん)前立腺肥大症が存在する場合(前立腺重量で言うと35cc以上)はホルモン療法にて前立腺サイズを縮小させてから小線源療法を行う必要があります。
さらに下記の適応にて述べさせていただくように、前立腺がんのリスク分類によって放射線外照射療法の併用、もしくはホルモン療法と外照射療法の併用が必要となります。

治療の適応

  1. 転移・浸潤のない場合にのみ治療が可能です。
  2. 臨床病期が中間リスク群(PSAが10以上の方、前立腺生検でGleason3+4以上の検体が生検本数の30%以上にて検出された方など)は通常の放射線治療を追加することがあります。(中間リスクに対する小線源療法と放射線外照射療法の併用療法)
  3. さらに高リスク群の前立腺がんの患者様に対してはホルモン療法と放射線外照射療法の併用を必要とします。(高リスクに対する小線源療法とホルモン療法と外照射療法の併用療法)
  4. 再発例の方、前立腺肥大症が顕著な方、直腸手術後の方、抗凝固療法(血液をサラサラにする薬をたくさん内服されている方)では治療できない場合があります。

治療法

手技

治療は下半身麻酔で行います。尿道に排尿のための管が入り、翌日まで留置されます。
台に横たわって頂き、下肢を挙上した格好で治療を行います。肛門からエコーのプローブが入り、エコーの画像を見ながら、会陰部から前立腺内にアプリケーター針と呼ばれる長い針が20本程刺入されます。コンピューターで計算された通りに、それぞれの針の中に数個ずつシード線源が挿入されていきます。全部で40~100個程のシード線源が留置されることになります。
治療には麻酔に要する時間を含めて、2~3時間前後かかります。

治療後退院まで

治療後、部屋のベッドへもどります、術当日午後3時から安静解除となり個室内のみでの移動が自由になります。問題となるような症状がなければ、治療の翌日に退院となります。

退院後

シード線源は永久に入ったままになります。放射能は初めから非常に弱いもので、しかもでる放射線の量は60日毎に半分に減少し、そして1年経つとほとんど0になります。退院後2週間から1ヶ月目にPSAの採血およびレントゲン、CTスキャンの検査を泌尿器科外来およびレントゲン室で行いますので必ず受診して下さい。

合併症

手術中、直後には穿刺に伴う血尿が見られます。小線源療法に伴う合併症としては、治療後早い時期に出現する急性合併症と治療後1~2年位のうちに出現する晩期合併症があります。急性合併症には血尿、血精液症、排尿障害・尿閉、排尿痛、会陰部・肛門部痛、頻尿、会陰部皮下出血、肛門出血・血便などがあります。血尿、血精液症、会陰部皮下出血(針を刺した股の部位の皮膚が紫や黒くなる)などの現象はほとんどの場合に見られます。排尿障害に対して、治療後に尿道をひろげる作用のある薬を服用して頂きます。退院後もしばらく服用し、排尿の状態が改善したら中止します。治療後すぐに尿閉をきたす場合も稀にあり、その場合には排尿の管を留置して退院します。治療後に尿閉をきたす人は4~5%程度です。
晩期合併症は放射線の組織障害によって起こってくるものです。性機能の障害は外照射や他の治療よりも低率ですが、それでも20~30%程度に出現します。この治療の後で勃起力の低下などの性機能障害が20~30%程度の人で生じると言われています。

経過観察、再発時の治療

放射線照射後のがん細胞は1~2年程かけて徐々に死滅していきます。しかし、放射線に感受性の少ないがん細胞もあり、全滅するとは限りません。放射線治療の効かない細胞が多くあった場合や、照射が充分に行きわたらないところにがん細胞があった場合には再発となり、次なる治療を要することになります。これらの再発の出現がないかどうかは、定期的に血液検査を行い、PSA値を見てからの判断となります。治療後、1ヶ月目あたりで腹部のレントゲン撮影、CTスキャンの検査を受けて頂き、前立腺の腫れがなくなった時点での最終的な線源の配置を確認します。その後は状態が落ち着いていれば3ヵ月後との通院となり、PSAの採血をそのたびにして頂きます。再発時の治療にはホルモン療法が一般的に用いられます。ホルモン療法は局所再発でも転移でも有効です。ホルモン療法はLH-RHアゴニストの注射を用いるのが一般的で、小線源療法後の再発例においても長時間の効果が期待できます。
近年、小線源療法後の手術療法(ロボット手術)を施行する施設も増えてきており今後治療成績が明らかとなれば手術療法を再発時の救済療法として提示させていただくかもしれません。

三重大学病院では小線源療法を導入後、2020年5月までで182名の患者様を治療しており良好な成績を残しております。
もし治療に興味がありましたら紹介状取得の上外来を受診してください。

三重大学病院での小線源療法は木曜日に施行しておりますが一月に施行できる手術が限られており、誠に申し訳ございませんが待機期間が長くなってしまうことがございます。しかし外来にて前立腺がんの状態を慎重に評価して、厳重な経過観察ののちに治療を計画させていただきます。