乳房再建

Case
Introduction

乳房再建とは

乳房再建とは乳がんの治療のため手術で変形してしまった、あるいは失われてしまった乳房を取り戻す手術のことです。また乳房にメスが入るとなった際に、目が覚めた時に乳房を失ってしまったという悲しみに伏さなくてすむよう腫瘍切除と同時に胸の膨らみを再建する手術です。

私たちは乳房再建を通して患者さんが「乳がんのことなんて忘れちゃった。」と言いながらそれぞれの日々をすごしてもらうことを目標としています。

乳房再建の方法

組織拡張器(ティシュ・エキスパンダー)挿入とは

乳房再建を行うにあたりしなやかで柔らかい肌によりきれいに整った乳房を再建できるよう準備段階として乳房切除の際に組織拡張器(ティシュ・エキスパンダー)と呼ばれる皮膚を伸展させるためのシリコン製バッグを挿入いたします。また、乳がんの手術から時間が経ち、乳房再建を希望するという方も同様にティシュ・エキスパンダー挿入術を受けられます。
これにより、術後の外来でティシュ・エキスパンダー内に水を注入していくことで平らになった胸が膨らみを取り戻していき、実際のインプラントもしくは自家組織移植に向けコンディションを整えます。

人工乳房手術(インプラント法)とは

インプラント法の最大の利点は皮弁法とは違い、体のほかの部分にきずをつけずに乳房再建が行えるということです。当科では保険適応のシリコンインプラントの中から患者さまそれぞれの胸のかたちにもっとも合うものを選び、それをもとにエキスパンダーとインプラントの入れ替えを行います。
入れ替えに際して、乳房切除の手術の際にできたきずあとと同じ部位から皮膚切開を行い、形成外科が持つ乳房形成技術ときずあとを目立たなくする特殊な縫合術を使いできるかぎりきれいな仕上がりになるよう工夫いたします。
全身麻酔で4時間ほどの手術でからだに対する負担は少なく、おおよそ1週間ほどの入院で完結いたします。

インプラント法の最大の欠点は、感染に非常に弱いという点です。手術を受けた方のうち数パーセントの確率で、インプラント感染が起こり場合によっては再入院やシリコン抜去の必要があります。また、2019年度までに保険適応であったシリコンインプラントには3,300人に1人の確立で悪性腫瘍の発生が確認されており、世界的に流通がない状態となってます。
現在、新たに保険適応となったシリコンインプラントを用いて乳房再建を行なっております。今後、安全性を確認の上、厚生労働省が認可する保険適応のシリコンインプラントのバリエーションは増えることが予想されます。

自家組織移植術(皮弁法)

皮弁法の最大の利点は、シリコン法にくらべ体の動きや体勢に応じた自然な形を再現でき、自分のからだの一部で乳房再建を行うため一生ものだという点です。また、体重の増減にあわせ再建乳房もサイズアップ・ダウンいたします。当科では主にお腹の脂肪もしくは内ももの脂肪を用いた自家組織移植を行なっていますが、患者さまそれぞれの体型に合わせて、脂肪の採取部位を提案し乳房を形成いたします。
移植方法により異なりますが、多くの場合、全身麻酔で8時間ほどの手術でおおよそ2週間ほどの入院となります。

皮弁法の最大の欠点は、インプラント法にくらべ自分のからだの一部を移植するため手術直後のからだに対する負担が大きいという点です。また脂肪を採取した部位にきずあとが残ります。移植に際して血管吻合術を行った場合は、数パーセントの確率で血管トラブルが起こり再手術となることがあります。

再建法の決定について

乳がんの治療を最優先に考え、乳房再建の適応があるかどうかは乳腺科の治療方針をもとに判断させていただきます。乳房再建の適応となればインプラント法、皮弁法どちらも保険適応であり、手術後1ヶ月ほどすれば自由に日常生活を過ごすことができるようになります。
リスク・ベネフィットがそれぞれにあり再建方法についてどうしようか悩まれる方は非常に多いです。当科はインプラント法・皮弁法のどちらにも力を入れており、患者さんそれぞれにとって「自分らしい」再建法がなにか一緒に悩み考え、納得された上でもっともよいと思われる再建法を行いたいと考えます。

三重大学では乳腺外科と形成外科が綿密な連携をとっておりシームレスに美しい乳房の再建を行うことが可能となっています。乳房再建を通して乳がんでつらい思いをした皆さまが、乳がんのことを忘れ日々をすごせるよう、当科はできるかぎりのご協力をさせていただきます。

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