耳の治療とは
形成外科では耳の形を修正したり、小さい耳に軟骨などを用いて形成したりしています。 日常診療では①埋没耳②副耳③スタール耳④垂れ耳(折れ耳)⑤耳垂裂⑥小耳症について治療に力を入れております。
① 埋没耳
耳介上部が屈曲変形し側頭部皮下に埋没しているもので、頻度は0.2-0.25%です。 見た目だけでなく、マスクや眼鏡等の装着が難しいことがあります。自然に良くなることはないので早期に保存治療を開始し、改善しない場合は手術を考えます。
保存的治療
- 治療時期:生後数日から装着すれば短期間で矯正できますが、1ヶ月以上になると1-2カ月の矯正期間が必要になります。一歳頃でも保存的治療できますが、軟骨が硬くなりまた矯正器具を自分で外してしまうために治療が難しくなることがあります。
手術治療
- 治療時期:就学前にすることが多いです。
- 治療方法:周囲の皮膚を移動させ、軟骨の埋没している部分を外に引き出し、位置を固定します。
- 治療時間・入院期間:1-2時間・3-4日
② 副耳
多くは耳の前の頬の部分に隆起を認めるもので、頻度は0.14%~1.5%です。
手術治療
- 結紮法:茎が細い場合には糸を用いて根元を縛ると、一週間程で脱落します。簡便ですが根元ですこし膨らみが残ることがあります。 外来診察15分程度(入院不要)
- 切除法:根部から皮膚線や耳輪に沿って紡錐形に切除します。小さいお子さんの場合には全身麻酔下に行います。治療時間・入院期間:1時間・3日
③④ スタール耳や垂れ耳
保存的治療
- テープ等で固定します。新生児、乳児ではよく反応しますが、生後1歳以上は自然経過で改善するのは難しくなります。
手術治療
- 耳の軟骨を耳の後ろから糸をかけて矯正して自然な形にします。
- 治療時間・入院期間:2時間・3日
⑤ 耳垂裂
耳たぶ(耳垂)が分割されているものです。
手術治療
- 単純に裂を寄せ直線縫合すると縫合部が拘縮しますので、すこし工夫をしながら、きれいな形にします。ピアスなどで切れてしまった場合も治療可能です。
- 治療時間・入院期間:1-2時間・15歳以上であれば入院不要
⑥ 小耳症
1) lobule type 2) small concha type 3) concha type の3つの型があります。
手術時期
肋軟骨採取のため胸囲60㎝を超える10歳頃が治療時期となります。
手術治療
肋軟骨挿入による耳介形成と耳介挙上の2回にわけての手術を行うことが多いですが、エキスパンダーを用いた皮膚拡張術、肋軟骨挿入術、耳介挙上術の3回にわけて手術をすることもあります。さらに新しい薄皮弁を用いた外耳道を同時に作ることもあります。
手術例:2回にわけて行う手術
1回目手術 (肋軟骨をもちいて耳の形を作ります)
3本の肋軟骨で耳の形をつくります。これを側頭部皮下に埋め込み、吸引のチューブで皮膚を軟骨に密着させて新しい耳をつくります。
治療時間・入院期間:8時間・10-14日
2回目手術(側頭部に作った耳をマスクがかけられるように起こします)
1回目の手術ののち半年~1年後に行います。耳介後方の皮膚を切開し作った耳を起こします。頭部の皮膚や、腿の付け根や耳の後ろから薄い皮膚を採取して被覆します。外耳道を同時に作ることもあります。
治療時間・入院期間:8-14時間・10-14日
上記の治療ののち、必要に応じて小修整をする手術を追加することがあります 。
参考文献
Narushima M, Yamasoba T et al. Pure skin perforator flap for microtia and congenital aural atresia using supermicrosurgical techniques. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2011;64(12):1580-4.
成島三長ほか:【外耳手術】 耳介奇形 耳科手術編JOHNS32巻9号(2016)