リンパ浮腫

Case
Introduction

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫は「リンパ液の流れが悪くなることで起こるむくみのこと」で、悪性腫瘍の手術や怪我などの後に生じる二次性(続発性とも言います)リンパ浮腫と、もともとのリンパ管低形成(構造・機能の弱さ)による一次性(原発性)リンパ浮腫に分けられます。

どこで流れが悪くなるかによって、手、うで、あし、陰部など、むくみが出る場所は様々です。リンパ浮腫になると、むくみが進行し、蜂窩織炎(読み:ほうかしきえん)と呼ばれる感染症状を繰り返したり、リンパ漏(読み:リンパろう)という皮膚表面からリンパ液が漏れ出る状態になったり、象皮という皮膚がざらざらして硬くなる症状を引き起こすことがあります。
リンパ浮腫の進行は生活の質を大きく低下させてしまうことになりかねません。

三重大病院でできること

リンパ浮腫に対する治療はもちろんリンパの流れを良くすることで、 現在行われているのは保存療法(用手的リンパドレナージュ、バンテージ・弾性ストッキング・スリーブの着用)と手術療法です。

三重大学病院では、10年以上前から様々な分野のエキスパートが集う「リンパ浮腫外来」があります。
現在では悪性腫瘍の手術を担う婦人科と乳腺外科の医師、リンパケアの技術を持った看護師、 リンパ浮腫の手術治療をする形成外科が強力なタッグを組んでリンパ浮腫の治療に取り組んでいます。

リンパについて

「リンパが腫れる」や「リンパマッサージ」など「リンパ」という言葉は何かしら耳にしたことはあるのではないかと思います。しかしながら、「リンパとは何か」と聞かれたら説明できるでしょうか。
心臓から送り出された血液が動脈を流れ、体の隅々までたどり着き、90%は静脈を流れてまた心臓に戻っていきます。残りの10%がリンパ液となり、リンパ管の中を流れます。そしてリンパ管の途中(脇の下やもものつけねなど)にはリンパ節というものが存在します。そこには免疫機能があり、リンパ管を流れている細菌などと戦う場としての役割があります。リンパ管も最終的には鎖骨のあたりで静脈の中に流れ、また心臓に戻ります。

リンパ浮腫の検査

当院で行うことのできる検査には次の2つがあります。

リンパシンチグラフィー

⼈⾎清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム(Tc-99mHSAD)という物質を皮膚に注射して、その物質がリンパ管の中に取り込まれていく様子を見ることができます。手や腕ののリンパ浮腫の場合は手の指の間へ、あしのリンパ浮腫の場合は足の指の間へ注射します。注射の後およそ15分後と1時間後の2回撮影して検査終了になります。2018年より保険診療で行うことができるようになりました。基本的は外来で行う検査です。

インドシアニングリーン(ICG)リンパ造影

こちらもリンパシンチグラフィーと同様に皮下にICGという物質を注射してその物質がリンパ管の中に取り込まれていく様子を見る検査です。こちらは手術をする場合に手術前に行う検査です。リンパシンチグラフィーは、深い部分のリンパの流れがわかりますが、検査の性質上おおまかな流れしかわかりません。それに比べてICGリンパ造影は皮膚に近い浅い部分のリンパの流れしか見えませんがかなり細かいリンパの流れまで見ることができ、しかもリアルタイムでの観察が可能です。これを手術前に行うことでどのリンパ管を手術するのが効果的か判断することが可能です。こちらは、保険診療ではありませんが、当院の未承認新規医薬品・医療機器評価委員会で、使用が承認されており、当院では検査にかかる費用も病院が負担します。

形成外科での手術治療

当院で行うことのできる検査には次の2つがあります。

※手術時間・入院期間には個人差があります。

リンパ管静脈吻合術(Lymphaticovenular Anastomosis: LVA)

  • 麻酔法:局所麻酔
  • 手術時間:3-4時間
  • 入院期間:3-7日間

リンパ組織の移植

  • 麻酔法:全身麻酔
  • 手術時間:8時間前後
  • 入院期間:2週間程度

リンパ管は0.5㎜前後の管で、いずれの手術も手術用顕微鏡を使って、それらをつなぐ技術がなければできません。
リンパ管静脈吻合術は、リンパの流れが悪くなっている箇所よりも前の段階でリンパ管と静脈をつなぐことで流れの悪い場所を通らずに心臓に戻る経路を作ってあげる手術です。そしてリンパ管がすでにリンパ液を押し流す力を失っている場合は他の場所から元気なリンパ組織を移植する手術を行います。

手術のあとのケア

清潔に保つように気を付けて、テーピングなど傷跡のケアを行っていただきます。
半年以上~数年の観察を経て、追加手術を検討することがあります。
外来での経過観察を続けていきます。大学病院の性質上、状態に応じて、お近くの病院へ通っていただくこともあります。

自費リンパ浮腫外来について

自費リンパ浮腫外来は形成外科医師の指示のもと、資格を有するリンパセラピストが患者さま一人一人に合わせたリンパ浮腫のケアを行っている外来です。手術による効果をより良いものにするために、受診をおすすめしています。

目的

  • リンパ浮腫に対する知識を身につける
    (リンパ浮腫の病態と原因について、スキンケアについて、日常生活の注意事項について、急性炎症時の対応についてなど)
  • セルフマッサージの方法を習得する
  • 浮腫の状態に合った弾性着衣の選定、正しい着用の仕方を身につける
  • (必要な患者さま)包帯での圧迫療法を習得する

*保険外診療のため、費用は全額自己負担となります。

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