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小児血液腫瘍学

小児血液腫瘍サブスペシャリティー

小児科専門医を取得し、小児科医として独り立ちした後、サブスペシャリティー研修を行うことにより、高い専門性をもって診療にあたるだけでなく、多面的な視野をもって日常診療を行うことが可能になります。三重大学小児科では小児科後期研修終了後に、小児科の中の各専門分野サブスペシャリティーの技能習得と研究が可能です。

小児血液腫瘍性疾患の治療施設は、全国的にも大学附属病院や小児病院などの専門施設に限定されており、三重県では三重大学医学部附属病院が唯一の治療・研究施設です。血液腫瘍学の特徴として、分子生物学や免疫学などの基礎医学の理解が臨床に直結しますので、研究を行うことが重要と考えます。

小児血液腫瘍サブスペシャリティー希望者は、三重大学附属病院で1~2年間の血液腫瘍性疾患の診療を終了後、大学院に入学します。大学病院に在籍中の臨床経験で、診療実績を満たすことは十分可能ですので、学位と専門医(血液専門医、小児血液がん専門医)を同時に取得することをめざします。身につけた専門技能をもとに、希望者は国内・国外への留学も行います。これらの過程で身につけたリサーチマインド(ビジョンを持って独自に考えるマインド)、集学的アプローチ(領域をまたぐ見方・考え方・アンテナの張り方)と国際的視野は、臨床医にとって汎用性のある能力と思います。

小児がんで苦しんでみえる患者さんの、少しでもお役にたてるように、私達と共に研究し、新しい治療開発へとつなげましょう。

三重大学小児血液がん領域の研究領域

希少疾患の診断

小児がんの新しい治療研究(基礎研究)

第Ⅰ相 臨床試験

第Ⅱ相 臨床試験(国際共同研究)

小児がん研究分野の研究内容

小児がんで最も多い悪性腫瘍のひとつである神経芽腫のなかで、1才半以上に発症することが多い進行神経芽腫は、造血細胞移植を含む大量化学療法、放射線療法、外科的治療による集学的治療を行っても予後は不良であり、新しい治療法の開発が望まれています。これまで三重大学小児科では、神経芽腫におけるIGF/PI3K/Akt経路を介した細胞増殖に注目し、研究を進めてきました。神経芽腫細胞株ではIGF/PI3K/Akt経路が自己活性化しており、抗IGF-1抗体、IGF-1受容体阻害剤picropodophyllin(PPP)、そしてAkt阻害剤MK2206によりAkt活性化が抑制され細胞死が誘導されることを証明しました(図1)。

これらの知見をさらに発展させ、IGF/PI3K/Akt経路の下流に位置するmTORに注目し、mTOR complex 1 (mTORC1)とmTOR complex 2 (mTORC2)の両者を同時に阻害するdual mTOR inhibitor(AZD8055)は、高悪性度の神経芽腫細胞株に対し、強い抗腫瘍効果を持つことを報告しました。さらにAZD8055は、動物実験モデルでも強い抗腫瘍効果を示しました(図2)。

神経芽腫治療の中心的は化学療法ですが、既存の抗がん剤に抵抗性の神経芽腫が多く存在します。神経芽腫に対し、IGF/PI3K/Akt/mTOR経路を標的とした分子標的薬は、治療の選択肢が増え、神経芽腫に苦しむ患者さんの予後向上につながります。
この様に我々三重大学小児科では、小児がんで苦しんでみえる患者さんのお役に少しでもたてるように、基礎研究・臨床研究に取り組んでいます。是非、私達と共に研究し、小児がんの新しい治療開発へとつなげましょう。

研究業績(過去5年)

Xu DQ et al. Induction of MEK/ERK activity by AZD8055 confers acquired resistance in neuroblastoma. Biochem Biophys Res Commun. 2018 May 15;499(3):425-432.

Xu DQ et al. Anti-tumor effect of AZD8055 against neuroblastoma cells in vitro and in vivo. Exp Cell Res. 2018 Apr 15;365(2):177-184.

Qi L et al. PDK1-mTOR signaling pathway inhibitors reduce cell proliferation in MK2206 resistant neuroblastoma cells. Cancer Cell Int. 2015 Sep 29;15:91.

Shankar V et al. Mesenchymal stromal cell secretome up-regulates 47 kDa CXCR4 expression, and induce invasiveness in neuroblastoma cell lines. PLoS One. 2015 Mar 16;10(3):e0120069.

Qi L et al. Heterogeneity of neuroblastoma cell lines in insulin-like growth factor 1 receptor/Akt pathway-mediated cell proliferative responses. Cancer Sci. 2013 Sep;104(9):1162-71.