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小児循環器・血管医学

小児循環器・血管医学研究分野

1. 臨床医の立場からの研究活動の考え方

小児循環器グループでは、基礎と臨床の視点から、個々の症例に端を発して、基礎から臨床、さらに社会医学的視野を持つ臨床医、医学研究者の育成を目指しています。それを通じて、対象疾患の分子機序の解明、治療標的の同定、診療ガイドラインの書き換え、政策提言を全体目標としています。

新学期に思う:小児循環器を始める先生に (三重大学大学院医学系研究科小児科学 三谷 義英)

2. 臨床活動

小児循環器・小児外科診療を中心とした三重大学周産母子センターにて、新生児重症心疾患を中心に胎児診断例、低出生体重児、小児外科疾患合併例も含めて診療しています(NICU入院の先天性心疾患患者数177例/2011-16年、小児外科疾患159例/2011-16年)。特殊ガス吸入療法(一酸化窒素吸入、窒素吸入)と肺血管拡張療法を全国に先駆けて導入し、手術成績の向上に寄与してきました。その中で、最重症の左心低形成症候群に対する低侵襲姑息術を考案してきました。難治例の増加に伴い、カテーテル治療の施設要件を満足し(カテーテル治療件数198例/2011-16年、人工心肺使用先天性心疾患手術数300例/2011-16年)、国立大学中2番目に心房中隔欠損のデバイス治療を開始しました。全国的な心臓性突然死研究、学校検診研究、学校心臓検診ガイドライン作成に関わってきました。最近、循環器内科・産科・心臓外科と共同カンファレンス・診療により先天性心疾患、肺高血圧、川崎病の移行期診療に積極的に取り組んでいます。日本循環器学会の専門委員会で、移行診療の提言作成に積極的に関わっています。

3. 臨床研究

重症先天性心疾患に対する肺血管拡張療法、病理組織学的研究、カテーテル治療、川崎病の遠隔期の新規画像診断(OCT, VH-IVUS, MRI, MDCT)、学校心臓検診の研究、肺高血圧・川崎病後遺症・心臓性突然死の全国調査、新薬の臨床研究を実施しています。現在、データベースの突合も含めたビッグデータへの方向性を持っています。今年(2017年)の米国心臓学会(AHA), 米国呼吸器学会(ATS)で、先天性心疾患に伴う肺組織病変の研究、川崎病冠動脈後遺症への新規画像診断、心臓性突然死の10年間のデータベースの全国研究結果を報告しています。

4.基礎研究

肺高血圧モデルを用いた基礎的研究を20年間一貫して行なっています。最近、特にヒト肺高血圧類似モデルを用いて、肺血管病変の細胞成分、網羅的遺伝子発現、遺伝子改変の点からの基礎研究、さらに炎症性病態、原因遺伝子BMPR2の関与について検討しています。これまで東海地区を中心として、他大学から大学院生、リサーチアソシエートと一緒に研究を行なってきました。今年(2017年)の米国心臓学会(AHA)で、網羅的遺伝子発現解析からの候補遺伝子同定の報告を行なっています。最近、若手メンバーが、米国心臓学会AHAのYIAを3回受賞しました。