リンパ腫

リンパ腫の新規疾患単位の同定に関する研究

 当グループでは1980年代より凍結切片を用いた免疫組織化学によるリンパ腫の細胞表面抗原 (表面マーカー)解析を継続的に行っており、各種リンパ腫病型における表面マーカーと診断時病態、予後との関連に関する研究成果をきっかけとして、リンパ腫の中の「新しい病気」を見つける研究を行ってきています。
中でも、悪性リンパ腫の最大病型であるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL)におけるCD5発現の意義に関する研究は、計3回の全国多施設共同研究を行い、その成果は血液腫瘍の世界標準分類であるWHO分類(2008)への 「CD5陽性DLBCL」収載に大きく影響を与えました。
さらに、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行うことで、gamma/delta T細胞リンパ腫の詳細な分類の根拠となるデータを明らかにし、これはWHO分類(2008)の正当性を裏付けるデータとなりました。今後も、リンパ腫患者さんの個々の病気の違いを明らかにする研究を続けていきたいと考えています。

難治性リンパ腫に対する新規治療法の開発に関する研究

表面マーカー解析の結果が難治性リンパ腫に有効な治療法 (新しい治療法)開発のきっかけとなることがあります。
当グル―プは、新しく難治性リンパ腫として疾患概念を確立したCD5陽性DLBCLに対し、三重大学病院での治療経験から、DA-EPOCH-R療法と高用量MTX療法を組み合わせた治療法が有望であることを報告しました。
現在、厚生労働省からの研究費を受け、国内の血液・腫瘍内科の専門医と共同で、この治療法の有効性と安全性を調べる臨床試験 (PEARL5試験)を行っています。

また当グループは、鼻腔に発生するNKまたはT細胞由来のリンパ腫 (NK/T細胞リンパ腫)に多剤耐性現象に関与するP糖蛋白が高率に発現していることを発見し、放射線治療と、多剤耐性現象に関与しない治療薬を中心とした化学療法の同時併用療法 (RT-DeVIC療法)が治療法として有望であることを見出して報告しました。
この治療経験をもとに、全国的研究組織 (日本臨床腫瘍研究グループ: JCOG)において研究事務局として臨床試験に参加し、その成果からRT-DeVIC療法は国内外のガイドラインに収載されました。

現在、NK/T細胞リンパ腫患者さんの治療内容、治療別の効果と副作用を明らかにするとともに、治療前にその効果を予測する方法を検討する調査研究 (NKEA project)を、国内の血液・腫瘍内科医と放射線腫瘍医による共同研究として行っています。
施設から国家レベルの広い範囲で、リンパ腫患者さんの予後改善に直接つながる研究に参加してくれる若い先生方をお待ちしております。

34例の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)患者検体を用いた遺伝子プロファイリングの結果から
肝脾γδTCLはPTCLの中で独自の疾患であることが示された。