免疫病態

私達が日常の診療の中で目にする病態には、免疫が関わるものが少なくありません。

血液・腫瘍・消化器内科領域では、悪性腫瘍をとりまく微小環境、感染症、炎症病態などに、免疫が深く関わっています。
また抗体医薬品、造血幹細胞移植など、免疫の仕組みを利用した治療法が実用化され、がん免疫療法は臨床の場において効果および安全性が検証されつつあります。

私達は以下の免疫が関わる病態研究を通して最新の知識に触れ、研究手法を習得し、より多くの病態について理解を深められるようにしたいと考えています。

 

 

造血幹細胞移植後GVHDの病態メカニズム解析

造血幹細胞移植による造血器腫瘍の治療では、ドナー免疫系による抗腫瘍効果(Graft-vs-Tumor(GVT)効果)が、腫瘍の制御に重要な役割を担っていることが明らかとなっていますが、レシピエントの正常組織に対するドナー免疫系による同種免疫応答は、移植後合併症である移植片対宿主病(Graft-vs-Host Disease, GVHD)として表れます。

GVHDの病態メカニズムには不明な点が多く、GVHDの制御は臨床的に大きな課題の一つとなっています。GVHD病態を理解することは新たな制御法の開発につながる可能性があり、現在当科では学内外の研究グループと連携して、動物モデルや臨床検体を用いたGVHD病態メカニズムの研究を進めています。

 

 

がんに対する免疫応答メカニズムの解析

悪性腫瘍(がん)の診療において、当科は薬物療法、内視鏡検査・治療、免疫療法の臨床試験などで役割を果たしていますが、治療成績をさらに向上させるために私達はより深く「がん」を理解する必要があります。

近年、がんの形成や進展に免疫が関与することが明らかとなってきており、「免疫」を標的とした治療法が注目を集めています。

現在当科では動物モデルを用いて、個体レベルおよびがん局所における免疫応答解析を進めています。
これらの研究により、がんが治療に反応するメカニズムや、免疫から逃避するメカニズムを明らかにしたいと考えています。