三重大学医学部附属病院 救命救急・総合集中治療センター(救急科)のホームページを訪問いただきましてありがとうございます。当センターは2010年6月より救命救急センターとして認定され、2011年1月に今井寛先生が初代センター長・教授として着任されました。今井先生は3次(重症)救急医療体制を整備され、地域メディカルコントロールや、各種標準化トレンーニングコース教育の普及など、病院前診療へも積極的に介入され、2012年2月からは念願のドクターヘリの運行が伊勢赤十字病院との共同運行で開始されました。この間に多くの救急科専門医、集中治療専門医が県内に誕生し、地域の基幹病院への派遣も始まり、三重県における救急・集中治療の新しい幕開けが到来しました。
県内でも順調に救急・集中治療体制が整備されつつあると考えていましたが、2019年末に突如として発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、幾多の波を繰り返しながら救急・集中治療体制に甚大な影響を与えたことは記憶に新しいかと思います。当センターも県内のCOVID-19最重症例を中心に受け入れてきましたが、患者が多数発生(サージ)すると、診療の質の維持が難しく、本来であれば救命できたはずの命を失ってしまうという事態が発生しました。忸怩たる思いをしながら、現場で診療に携わった経験から、県内の救急・集中治療体制をハード面、ソフト面ともに充実させることが急務であると切実に感じていました。
2023年6月より私が2代目のセンター長・教授として今井先生の後を引き継ぎましたが、このCOVID-19の経験をもとに、1)大学病院として最先端の医療を提供すること、2)地域の医療を守っていくこと、3)仲間を育成し、その人材を燃え尽きさせないこと、の3つを基本理念として、診療科の発展と、さらなる高みを目指していきたいと考えています。
1)最先端医療の提供では、これまでの守備範囲に加えて、私の専門が感染症であることから、敗血症を中心とした多臓器不全(特に、呼吸不全)に力を入れていきたいと考えています。感染症内科医がリードする救命救急センターは全国的みても希有な存在ですので、この強みを活かして大学病院だからこそ、そして私たちだからこそできる診療を展開して参りたいと思います。もちろん、当センターには私以外に、循環器専門医、外傷専門医、整形外科専門医など、それぞれのサブスペシャリティ部門では指導医として活躍できる人材がスタッフとして在籍しています。技術面だけではなく、他のメディカルスタッフと協力して、最高で最善の医療を提供できる救命救急が私たちのセンターにはあると確信しています。
2)地域医療の堅持、では維持するべきところは維持して、旧態依然として改善が求められるところには積極的に介入して、よりよい地域医療を作ってきたいと思っています。2023年4月からは、県内の消防と共同してハイブリッドワークステーションが稼働し始めました。これは県内各地の消防本部から出向してきた救急救命士が大学病院で活動するという、前例をみない画期的なシステムです。将来的にはこのシステムを高規格ドクターカーシステムに応用し、最終的には三重県全体を俯瞰できるようなメディカルエリア構築につなげていきたいと考えています。また、私の着任と同時に大学病院でも津市の2次輪番を一部応需する体制としました。私たちが津市の基幹病院を支援することで、地域救急医療の診療力が落ちないように精一杯支援をしていきたいと思います。
3)仲間の育成、は喫緊の課題です。絶体絶命と思われた患者さんが、集中治療室から退室して、一般病棟での療養を経て退院するときに、「私、歩けるようになりました」と集中治療室を訪問してくれることがあります。そのようなときに、言いようのない感動と、命の最前線で仕事をしているという責任感と充実感、そして次への挑戦が生まれてきます。ごく近い将来、当センターの拡充も予定されています。県内初のハイブリッドERの導入と、全国的に見ても最大規模の救急初療室、集中治療室を擁する救命救急センターに発展していく予定です。これからは、一緒に夢を見ることができる次世代を担う救急・集中治療医を大切に育成し、ともに成長していきたいと思っています。
2023年6月20日
三重大学医学部附属病院
救命救急・総合集中治療センター センター長・教授
鈴木 圭